文章の上達におすすめの小説/エッセイ100選

文章を書くのが好きな人というのは、たいてい本を読むのも好きですよね。そして、無意識のうちに自分の文体も好きな作家の影響を受けていたりするものです。そこで、筆者に深い印象を残しているエッセイや小説を独断と偏見で挙げてみたいと思います。

無料のKindle版(電子書籍)もたくさん紹介していますので、文章力の上達やライティングスキル向上を目指して、ぜひ読んでみてください。

目次

第100位 朝御飯(林芙美子)


ハムエッグ・ベーコン・紅茶という洋朝食と、ほくほくのご飯とそれが止まらないおかずという和朝食の描写が巧みで食欲をそそります。

第99位 異国食餌抄(岡本かの子)


人々がカフェに集っておしゃべりとアペリティフに興じているオシャレなパリの黄昏時の光景の描写が秀逸で、思わずそこにまぎれたくなります。

第98位 夏の葬列(山川方夫)


陰鬱で切ない結末ですが、主人公がいた芋畑の緑や真夏の空の青という色彩的な印象が強く残り、なぜか子供の頃を思い出してしまいます。

第97位THE WINDS OF GOD – 零のかなたへ(今井雅之)


主人公たちのタイムスリップが、戦争の悲惨さだけでなく、人には生死を超えたもっと大切なものがあるということも教えてくれます。

第96位 最後のストライク 津田恒美と生きた2年3カ月(津田晃代)


夫との出会いから最期を看取るまでの記録にとどまらず、所々で現在の医療のありかたに対する疑問を投げかけ、改善を求めています。

第95位 羅生門(芥川龍之介)


本当の悪とは何なのか、罪も己が生きてゆくために犯すものならば必要悪といえるのか、といったことを深く考えさせられます。

第94位 蠅(横光利一)


すべてが淡々と描かれてあっさりと結末を迎えるので拍子抜けしますが、それだけに逆にインパクトの強い作品といえるかもしれません。

第93位 告白(湊かなえ)


いろいろな登場人物の視点からそれぞれの心情がモノローグで綴られ、最後は衝撃の結末を迎えます。強烈なインパクトを残す作品です。

第92位 春琴抄(谷崎潤一郎)


物語は一見まったく理解しがたい世界の話のようですが、気品のある文体によって脳裏に映像が浮かんでくるかのような美しさを感じます。

第91位 対岸の家事(南伸坊)


普段夫人がこなしている家事を実際にやってみたという体験レポート。達成感があること、楽しいことが家事には大切だと感じさせてくれます。

第90位 愛の為めに(甲賀三郎)


前半では何やらいかがわしさが漂いつつも、最後には登場人物みんながハッピーになって終わるという人情話的な結末に心が温まります。

第89位 思い出の記(小泉節子)


小泉八雲夫人が描く家族の肖像ともいうべきエッセイです。夫人ならではの目線を通して小泉八雲の意外な素顔を知ることができます。

第88位 女性の諸問題(倉田百三)


男の地位や金にこだわったり結婚を焦ったりして失敗する若い女性たちを一刀両断。当時としてはかなりアグレッシブだったかもしれません。

第87位 十二神貝十郎手柄話(国枝史郎)


十二神はオチフルイと読みます。「半七捕物帳」のような内容ですが、テンポがよく、先が知りたくてどんどん読み進んでしまいます。

第86位 ばけものばなし(岸田劉生)


妖怪には足があるのに幽霊には足がないといわれるのはなぜだと思いますか?筆者はこの作品を読んで初めてその理由が理解できました。

第85位 小公女(バーネット)


子ども向けの本とあなどるなかれ。本当は大人のために書かれたのではないかと思うほど深イイ言葉がたくさん登場し、いろいろ教えられます。

第84位 リアル芸人交換日記(タカアンドトシ、よゐこ、アンジャッシュ、スリムクラブ、ダイノジ、オリエンタルラジオ)


初めのほうのケンカのようなやりとりには爆笑ですが、最後の相方への感謝の気持ちを綴るくだりでは思わず涙。文才のある芸人さんばかりです。

第83位 過ぐる川、烟る橋(鷺沢萠)


ハッピーとは言いがたい結末で読後感はあまりよくないのですが、これはこれでアリなのかなと思えるだけのクオリティの高さは感じます。

第82位 クロワッサンとベレー帽(鹿島茂)


筆者個人的には、このフランス通の著者のエッセイにより、「あれって世界共通じゃなくて日本独自のステレオタイプだったのか」と驚かされた部分があります。

第81位2/2(中島みゆき)


文章構成や言葉の使い方などが巧みで、専門知識が必要なくだりもよく調べて書いてあるという印象を受けます。ミュージシャンとはまた別の顔を見た感じです。

第80位 獄中生活(堺利彦)


今は獄中での生活を記した著書も珍しくありませんが、当時ではまだ衝撃的だったのではないでしょうか。筆者もこれで初めて実態を知りました。

第79位 T.R.Y.(井上尚登)


もともと放送作家だったからでしょうか、とても推理作家としてのデビュー作とは思えないクオリティの高さです。映画化もされましたね。

第78位 どくとるマンボウ航海記(北杜夫)


所々に自身の躁うつ病を綴っている部分がありますが、明るくサラッとしているので、読者も気持ちが沈むことなく楽しくサクサク読めます。

第77位 心がだんだん晴れてくる本(中山庸子)


単なる前向き思考だけではなく、まずは自分を受け入れること、疲れたら休んでもいいということを主に提唱し続けている人だと思います。

第76位 人間の証明(森村誠一)


単に推理小説としても面白いのですが、同時に戦争によって運命を翻弄されてきた人々の悲しい性も描かれていて、深く考えさせられます。

第75位 キムラ弁護士が駈けてゆく—赤裸々な私生活と「司法試験の傾向と対策」(木村晋介)

弁護士とは思えないほどの気さくさと明るさが満載のエッセイなので、司法試験云々よりもむしろ赤裸々な私生活のほうがインパクト大です。

第74位14-fourteen(桜井亜美)


酒鬼薔薇聖斗の視点からかの事件で逮捕されるまでの経緯を描いた架空小説です。読んでいて不愉快になるほどの具体的な描写には衝撃を受けます。

第73位 華岡青洲の妻(有吉佐和子)


華岡青洲の医療に対する情熱もすごいのですが、彼の被験者を買って出る妻と母親の女同士の確執にもすさまじいものが感じられます。

第72位 ねむりねずみ(近藤史恵)


歌舞伎の女形の妻と大部屋役者の女形という二つのまったく違う視点から一つの殺人事件を見るという手法が新しい、と出版された当時は感じました。

第71位 旅の理不尽 アジア悶絶編(宮田珠己)


好き嫌いがはっきり分かれるところかもしれませんが、そこかしこにどうしようもないギャグが盛り込んであるあたりはさすが関西人です。

第70位 ヴァンパイア・レスタト【上・下】(アン・ライス)


「夜明けのヴァンパイア」のいわゆるスピンオフ作品のようなものでしょうか。ヴァンパイアでも中身は普通の人間と変わらないこと、これまで自分が手にかけてきた人間たちにはそれだけの理由があったことなどが、レスタト自身の独白という形で綴られています。

第69位 注文の多い料理店(宮沢賢治)


おそらく、人生最初に出合うオチのある話がまさにこのあたりなのではないでしょうか。起承転結がはっきりしていて最後まで飽きさせない展開は、大人も子どもも楽しめて何度読み返しても思わずクスッと笑えます。筆者は国語の教科書で初めてこの作品に遭遇しました。

第68位 一房の葡萄(有島武郎)


筆者個人的には、外国人の女性というとおしゃべりで勝ち気というイメージしかありませんでしたが、この作品を読んで初めて、こんなに優しくて物静かな人もいるのだなと思いました。読み終えたとき、葡萄のみずみずしい描写がこの物語のすべてを象徴していたように感じました。

第67位 宝塚生い立ちの記(小林一三)


宝塚歌劇団を創設するまでの経緯や、宝塚音楽学校を出た女性には十分な素養が備わるため、たとえ歌劇団には入らなくても引く手あまたで嫁の行き先に困ることはないということなどをこれだけ自信たっぷりに書けるのは、やはり創業者である著者だからでしょう。

第66位 渦巻ける烏の群(黒島伝治)


死体の描写などがグロテスクな上に結末も悲惨なので辟易しますが、それ以上に、戦時中はどの国でも、自分自身や家族が食べていくために最終兵器(=体)を用いなければならなかった女性たちが、善悪のレベルを超えて当たり前にいたのだということを痛感させられます。

第65位 葬られたる秘密(小泉八雲)


単なる怪談話ではなく、結婚して子どもをもうけても誰にも言えない秘密を抱え続け、死んでもなおそれが露見するのを恐れて成仏できないという女性特有の可愛らしさ、もしくは執念深さや怖さが描かれていると思います。小泉八雲にしてはやや異色作かもしれません。

第64位 高瀬舟(森鴎外)


介護をしたことのある人や自身が介護を受ける立場になったことのある人には痛いほど共感できるテーマだと思います。はたして生きてさえいればそれですべてOKなのだろうか?という、おそらく永遠に答えの出ない問題を、読むたびにまたも考えさせられてしまいます。

第63位 故郷(魯迅)


国語の授業で習って以来、なぜか強く印象に残っています。おそらく「希望は本来有というものでもなく、無というものでもない。これこそ地上の道のように、初めから道があるのではないが、歩く人が多くなると初めて道が出来る」という最後のフレーズのせいでしょう。

第62位 流転の王妃の昭和史(愛新覚羅浩)


侯爵家令嬢から元清朝皇弟の夫人となった人であるからか、どんな苦境でも誰を憎み誰を恨むということがほとんどない、全体的におっとりとして品のある文体です。しかし、長女の死の場面だけはあえて感情を抑えて冷静に描いているように見え、隠れた芯の強さを感じます。

第61位 清朝の王女に生れて —日中のはざまで(愛新覚羅顕�)


学生時代をずっと日本の学校で過ごしたため日本語は流暢。女手一つで商売を始めて成功したり、密告によって逮捕・強制労働をさせられたりといった山あり谷ありの人生を、明るく強く、ときに面白く綴っています。実姉・川島芳子とのエピソードも貴重です。

第60位 深夜特急<1>香港・マカオ】(沢木耕太郎)


筆者が初めて読んだバックパッカーの旅行記がこれだったと思います。これまでの旅のイメージが完全に覆され、憧れと面白さであっという間に全巻読破してしまいました。このときほど、単身でバックパック旅行が自由にできる男性がうらやましいと思ったことはありません。

第59位 世界の食材探検術—比較食文化論 食糧・野菜編(吉村作治)


エジプト考古学で有名な著者が、エジプトのことではなく世界の食文化について書いたものです。各食材にちなんだ簡単でおいしいレシピもイラスト入りで紹介されているので、知識欲だけでなく食欲も満たしてくれる、まさに一冊で二度おいしい本ではないでしょうか。

第58位 帝都物語<1神霊篇>(荒俣宏)


フィクションとはいえ、これだけ実在した著名人をずらりと登場させ、ありえないことを普通にやらせてしまうSF小説はそうそうないでしょう。しかも、ちゃんと史実がベースになっているので不自然さはまったく感じません。気づけば全巻読破していたという感じです。

第57位 理想主義者(三沢光晴)


著者の目指したプロレスやレスラーとしての理想が、技術とメンタルの両面から的確な言葉でわかりやすく綴られています。一方、各章末に収録されている「三沢日記」のほうは、そんな立場を離れた一人の人間のぶっちゃけコラムになっていて、このギャップがまた面白いのです。

第56位 カモメに飛ぶことを教えた猫(ルイス・セプルベダ)


親をなくした赤ちゃんカモメを、空を飛べるようになるまで戸惑いながらも慈しみ育てあげた猫たちの姿が、時に水は血よりも濃いということや、自分と違うものを受け入れることの大切さなどを教えてくれている気がします。読み終わったときちょっと泣けてきました。

第55位 ないとう流(内藤剛志)


単なる俳優のエッセイにとどまらず、ちょっと変わった著者独自の家族観や、一見特別な世界に思える芸能界でも持つべきモラルは普通のサラリーマン社会と変わらないということなど、クールで率直な内容が多いと思います。亡き松田優作とのエピソードもレアです。

第54位 金鯱の夢(清水義範)


これほど故郷愛の強い作家はそうそういないのではないでしょうか。もし慶長8年当時、名古屋に幕府が開かれて名古屋弁が日本の公用語になっていたら?という大胆な想定で書かれたこのパスティーシュ小説は、まさに著者の名古屋愛を象徴する作品という気がします。

第53位 パタゴニア—あるいは風とタンポポの物語り(椎名誠)


通常の旅行記ではあまり家族のプライベートなことに触れることのない著者ですが、この作品ではいろいろな問題が重なって若干ぎくしゃくしていた夫婦関係にも触れているため、筆者自身はパタゴニア紀行の内容よりこちらのほうが強く印象に残ってしまっています。

第52位 珍プレー殺人事件(川上健一)

プロ野球の投手と捕手が事件解決に乗り出すという話です。投手のほうが理不尽な言動で捕手を振り回してばかりいて読むほうもやや飽きてきますが、おバカと見せかけて最後にしっかり謎を解き犯人を割り出す場面以降は、その長い中だるみも一気に爽快感に変わります。

第51位 樅ノ木は残った【上・中・下】(山本周五郎)


伊達騒動そのものだけに焦点をあてているのではなく、原田甲斐と彼にまつわるさまざまな人々の人間模様も描かれているので、時代小説というよりも壮大な人間ドラマといった趣です。登場人物たちがなにげなく口にする台詞の中に深い言葉がたくさん出てきます。

第50位 永遠の仔【上・下】(天童荒太)


ミステリー小説という形ではありますが、児童虐待問題が基盤になっていてとてもやるせない気分になります。彼らが大人になってからの、モウルの母親やジラフの養母の台詞には、もう自分を許してあげてというメッセージがこめられているようで、思わず涙が出ます。

第49位 二代目はクリスチャン(つかこうへい)


シスター自身の回想ではなく、彼女に想いを寄せていた神代刑事の妻が自分の娘に語りかけるという形の回想であるというのが若干ややこしいのですが、手法としてはある意味新しいのかな、と読んだ当初は思いました。映画を観るほうがわかりやすいかもしれません。

第48位 映画を見ると得をする(池波正太郎)


映画好きの著者ならではの視点で主に昔の洋画の評論をしています。基本的に邦画には厳しいようですが、映倫に媚びへつらわないアグレッシブな作品などは高く評価しているようです。筆者自身、この本のおかげで古い洋画もすすんで観るようになった気がします。

第47位 余白の愛(小川洋子)


会話が文語体であったり、主人公を含め主要人物の固有名詞が出てこなかったりと、世俗性からかなり離れた作風なので、好き嫌いははっきり分かれると思います。ただ、作品全体に流れている静かでゆったりとした時間の流れの描写には映像美のようなものを感じます。

第46位 春の雪—豊饒の海・第一巻(三島由紀夫)


輪廻転生を主題とした「豊饒の海」シリーズは、この第一巻の清顕と聡子の悲恋からすべてが展開します。性別・国籍を超えてさまざまな人物に転生してゆく清顕の魂が、主に親友・本多の視点から描かれています。オカルトではなく仏教的発想に由来していると思います。

第45位 めでたき風景(小出楢重)


このエッセイを読んで初めて、それまで謎だった画家という職業の人の暮らしぶりを垣間見ることができた気がします。また、日常のことだけでなく、見た夢のメモのようなものや芝居の感想なども書かれていて、なんだか人の雑記帳を覗き見たような気分になります。

第44位 すみれ(北条民雄)


子ども向けの話だと思うのですが、すみれがじいさんに「だれも見てくれる人がいなくても一生懸命美しく咲き、それから枯れたい」というところは、当時だけでなく、周囲に評価されることを意識しすぎて自分を見失う人の多い現代にも響くメッセージという気がします。

第43位 乙女なげやり(三浦しをん)


直木賞作家とは思えないぶっちゃけた内容のエッセイなのですが、むしろ自分のイケてない部分をこれだけ包み隠さず面白おかしく書いてしまえるところこそが、絶大な支持を得る所以なのかもしれません。こういう両極性を持っているというのは物書きとしては武器ですよね。

第42位 赤西蠣太(志賀直哉)


伊達騒動が下敷きとなっている物語ですが、主要人物がみな海の生き物にちなんだ名前であるというユーモアによってその重苦しさが軽減されていると思います。蠣太の単純な目論見と小江のまさかのリアクションは現代にも普通にありそうで、ちょっと笑えてきます。

第41位 おちくぼ姫(田辺聖子)


意地悪い継母に育てられ、召使い同然の扱いだった貴族のお姫様が青年貴公子と結ばれるという、まさしく日本版シンデレラ物語ともいうべき作品なのですが、なんと千年も昔に書かれたものだというから驚きです。これを若い読者向けに現代語訳したのがこの本です。

第40位 汚れた守護天使(リザ・コディ)

主人公の言葉遣いが上品ではないので好き嫌いははっきり分かれると思いますが、マフィア云々というきなくさい物語の本筋とは別に、イギリスのレスリング業界や悪役女子レスラーの本音・実態などを垣間見ることもでき、プロレスファンにとっては二度おいしい本だと思います。

第39位 マレー半島すちゃらか紀行(若竹七海・加門七海・高野宣李)


トラブルというほどでもないハプニングをネコブルと呼び、最終的には全部受け入れて楽しんでしまう彼女たちの姿勢こそが、旅にも人生にも必要なのかもしれないと思わせてくれる旅行記です。ほぼ女を捨てて苦境に立ち向かう姿に感動半分、笑い半分といった感じです。

第38位 空腹の王子(山口文憲)


食べ物へのこだわりや、独りが長い→自分だけのルールができる→今さら他人にペースを乱されたくない→さらに婚期が遅れるというスパイラルを認めつつお気楽独身ライフを謳歌する姿に、人生結婚以外にも選択肢はいくつもあるんだろうなという気がしてきます。

第37位 誰もわたしを倒せない(伯方雪日)


映像では絶対に不可能な文章ならではのトリックで読者をあっと言わせます。文字とそこから生まれる想像がいかに無限の可能性を秘めているかというのを知らされた気がします。また、最強といわれる選手の孤独や、最強とは一体なんなのかということも考えさせられます。

第36位 猿岩石日記〈Part1〉極限のアジア編—ユーラシア大陸横断ヒッチハイク(猿岩石)


ヨーロッパ編では少し旅慣れてきた様子がうかがえますが、このアジア編では、自分たちの置かれた状況が読めないまま数々の試練に遭遇して、戸惑ったりイラついたりしながらも次第に楽しめるようになってくる様子が面白く、一緒に旅をしているような気分になります。

第35位 ダディ(郷ひろみ)


元妻や娘たちに対する想いなどのシリアスな内容だけではなく、元妻との婚約後にかつての恋人だったあの超有名歌手から電話がかかってきていたことまで書いてある大胆なエッセイ。名前は出てきませんが、彼女の大ヒット曲のタイトルが出てくるのですぐにわかります。

第34位 王妃マリー・アントワネット【上・下】(遠藤周作)


マリー・アントワネットが主人公というわけではなく、瓜二つの容貌でありながら真逆の境遇にあるアントワネットに激しい憎しみを抱いている一人の貧しい娘の視点から、当時のフランス庶民の生活や王室の崩壊、革命などが描かれている、ちょっと変わった小説です。

第33位 ドグラ・マグラ【上・下】(夢野久作)


正直わけのわからない小説で、一つのジャンルにくくるのはほぼ不可能です。ただ、このくだりはいらないのでは?と思う部分も少なくない前半に比べ、後半は物語が突如急展開していくように感じます。挫折しかけても少し辛抱して読み進めることをおすすめします。

第32位 ここはどこ —時に空飛ぶ三人組(岸田今日子・吉行和子・冨士眞奈美)


おなじみ仲良し三人組の旅日記です。三人ともそれぞれ異なる文才とユーモアセンスがあって、笑ったり感心したり。岸田さんはクール、吉行さんは博識、冨士さんはボキャブラリーが豊富といった印象で、ぜひ彼女たちの他の著作も読んでみたいという気にさせられます。

第31位 後宮小説(酒見賢一)


素乾という架空の王朝をこれだけ史実にのっとっていかにも実在したかのように書き上げる手腕に、読んだ当初は驚愕をおぼえました。まったく不自然に感じないのは、著者自身が中国史を徹底的に調べ理解して書いているからでしょう。とてもデビュー作とは思えません。

第30位 キウィおこぼれ留学記(小林聡美)


おそらく経験のある人なら思わずうんうんと頷いてしまうであろう「留学あるある」が満載のエッセイで、筆者も面白いやら懐かしいやらで一気に読み終えてしまいました。留学記や滞在記によくある鼻につく自慢話的な傾向がなく謙虚なところにも好感が持てます。

第29位 ボヘミアの醜聞(アーサー・コナン・ドイル)


実に数少ないホームズの失敗エピソードです。探偵小説というと通常は無事解決した事件しか書かれないものですが、このようにあえて失敗談を数ある成功エピソードの中に混ぜることで、ホームズも完璧ではないという印象を与え、さらに人気を博したのかもしれません。

第28位 上海の西、デリーの東(素樹文生)


バックパッカーのアジア放浪記は珍しくありませんが、この旅行記には、現地であまりにも暇すぎて書いたという架空のエピソードが一章だけ含まれています。それがどれなのか、最後のタネ明かしまでわくわくしながら読んでみると、また一味違った楽しみ方ができますよ。

第27位 飛んだ旅行記(楠田枝里子)


テレビなどではスキのない完璧な女性という印象の著者ですが、このエッセイでは、自身の海外旅行エピソードと共に、天然キャラ・極度の方向音痴など想像もつかない素の部分もさらけ出しています。とっつきにくそうなイメージが一掃されること間違いなしです。

第26位 新・水滸伝【1〜4】(吉川英治)


梁山泊に108人が勢揃いするところまでで終わっているので、その先から結末までを知りたいという人には物足りないかもしれませんが、登場人物一人ひとりの細かい描写により、キャラを自分なりに想像しながら読めるのがこの吉川英治版の楽しいところだと思います。

第25位 無意識過剰(阿川佐和子)


そんなことまで書いたら一層婚期が遅れるのでは?と思わず心配してしまうほど、次第に女を捨てつつある自身の日常を綴っていますが、これも頭のいい女性の代表格のような著者の口から出るから面白く、また同じような立場の女性たちの支持を得るのかもしれません。

第24位 ゆっくり歩け、空を見ろ(東国原英夫)


あまりメディアで語られてこなかった著者の知られざる複雑な幼少時代の家庭環境を知ると同時に、人生はプラマイゼロであること、持てば持つほど失うものだから持つのは最小限でいいというシンプルな生き方などを、著者の母親の半生を通して教えられる告白小説です。

第23位 夏への扉(ロバート・A・ハインライン)


SFと聞いただけで敬遠してしまうという人でもすんなり入り込んで楽しめる小説だと思います。この物語で主人公がいう未来とは2001年のことなのですが、その未来をとっくに過ぎた現代にこの小説を読んでみると、いろいろな意味で感慨深いものがあります。

第22位 夫婦善哉(織田作之助)


普通ならなぜこんなダメ男と別れないのかと読者を呆れさせると思うのですが、いっこうに貧乏から抜け出せない生活や、その原因のダメ夫を見捨てられない蝶子の人の良さやのんきさを明るく描いて人情話にするところは、やはり関西人の著者ならではという気がします。

第21位 心やさしきネパール—精神科医も癒されたトレッキング紀行(中沢正夫)


家族で参加したヒマラヤトレッキングと自身の精神科医としての日々について綴られている旅の記録です。著者はあの「あやしい探検隊」の一員なので堅苦しい話は一切なく、ヒマラヤの情景と共に楽しく読めます。また、自身が心を病んだ時のことにも触れています。

第20位 恋愛中毒(山本文緒)


主人公の常識を逸した言動に苛立ちや恐怖を感じつつ読み進むうちに、自分の中にも少なからずそんな要素があるかもと気づかされます。精神を病んだ女性を主人公にしたものが多いこの著者の作品が支持されているのは、それだけ共感する読者が多いからでしょう。

第19位 女友達(新津きよみ)


ホラー小説ですが、表には出さなくても、顔、スタイル、センス、収入などあらゆることを比べ、相手より自分のほうが優れていれば満足、劣っていれば嫉妬心にとらわれるという女性同士だからこそ芽生える敵対心が、読んでいてうんざりするほど巧みに描かれています。

第18位 東欧・旅の雑学ノート —腹立ちてやがて哀しき社会主義(玉村豊男)


ユーゴスラビア、チェコスロバキア、東西ドイツなど、今はもう地図上に存在しない国々を旅した記録なので、今となっては懐かしい部分が多々あります。当時の社会主義国家独特の、人々の怠慢さや狡猾さなどに対して始終キレまくっている著者にも大いに共感できます。

第17位 生きるヒント【1〜5】(五木寛之)


ああするべきこうするべきという上から目線の自己啓発書はたくさんありますが、このシリーズには、こんなふうに考えてみるのもアリですよという、著者自身の経験を通した提案といった趣が感じられるので、読者も卑屈にならずに気楽に読めるのではないかと思います。

第16位 魔女のパン(O・ヘンリ)


「最後の一葉」や「賢者の贈り物」など感動的な作品の多い著者ですが、この話は、パン屋を営む独身中年女性の恋が、彼女のよかれと思っての親切心によってまさかの結末を迎えてしまうという、おかしいような切ないような、なんとも異色の物語になっています。

第15位 ジャムの壺から跳びだして(開高道子)


一家で物書きという開高家の日常の断片を垣間見ることができます。いつもいいもの食べていいとこ旅して羨ましい、と思う一方で、曰く「イマい女の子じゃなかった」著者の学生時代について書かれているくだりでは、悩むことは皆同じなのだなという親近感を抱きます。

第14位 英国ありのまま(林信吾)


海外滞在記によくある「この国はこういうところが優れている、その点日本はダメ」という書き方をせず、イギリスと日本それぞれの長所、短所を中立的な視点から挙げています。ところどころで早見優ファンであることに言及する俗っぽさもこの本を一層面白くしています。

第13位 バスがダメなら飛行機があるさ(内館牧子)

自身が手がけた大河ドラマ「毛利元就」の脚本に出てくる女性たちの生き方や実体験を例に、プラス思考より肯定思考、周囲を見回して出遅れたと焦る必要はない、バスに乗り遅れたなら飛行機に乗ればいいという、おおらかでしなやかな発想を提案するエッセイです。

第12位 ニューヨーク空間(有吉玉青)


おそらく留学を経験した人なら、著者の「自分をまるごと何とかしたくて」海外へ出るという気持ちが理解できるのではないでしょうか。アメリカの歴史や国民性などを、あくまでもアメリカ国民ではない一人の外国人留学生という立場から、冷静かつ詳細に考察しています。

第11位 灰色の記憶(久坂葉子)


20歳そこそこでどうしてこんな老成・達観したような文章が書けるのだろうと感嘆せざるを得ません。もっと長く生きていたらより多くの名作を生んでいただろうと思うと実に惜しい気がします。エッセイだけでなく、小説も著者の実年齢より大人びた作品ばかりです。

第10位 我が名はエリザベス 満州国皇帝の妻の生涯(入江曜子)


17歳で結婚してから41歳で死ぬまでを、婉容自身が「わたくし」という一人称で語るという形の架空の回想録です。といってもあくまでも事実に基いた上で若干の脚色を加えているだけなので、本当に婉容の胸のうちはこうだったのかもしれない、と想像させられます。

第9位 隣の嫁(伊藤左千夫)


農家の青年と隣家の嫁の恋というと何やらいかがわしげですが、お互いに相手の気持ちを知りつつも、立場が立場でなかなか一歩を踏み出せず道を踏み外すこともできない二人の純粋さはむしろ微笑ましくさえ見えます。「野菊の墓」などとはまたひと味違った作風です。

第8位 アンゴウ(坂口安吾)


妻と戦死した友人との不倫はどうやって明らかにされていくのか?決定的な証拠はいつどこで出てくるのか?妻の弁明は?というドキドキ感を、思いもよらない結末が涙に変えます。退廃感や毒気のある作品の多い著者にしては珍しく温かい読後感を与えてくれます。

第7位 武蔵野夫人(大岡昇平)


美しき人妻と戦争帰りのイケメン従弟とのロマンスを描いた小説です。許されない恋であっても、今にも一線を越えそうでなかなか越えない二人についやきもきしてしまいます。相手を思いやるからこそのすれ違いを経た二人を待ち受けるのは、あまりにも悲しい結末です。

第6位 貞操問答(菊池寛)


姉妹間の確執あり、不倫ありのドロドロ小説ですが、どこかカラッと明るく、昭和のホームドラマのような雰囲気が作品全体に漂っている気がします。また、何かと世話が焼ける姉と狡猾な妹との間で苦悩する主人公の中間分子あるあるにも大いに共感できてしまいます。

第5位 もう頬づえはつかない(見延典子)


なんといっても衝撃なのが、著者が早稲田大学の卒業論文として提出したのがこの小説だという事実です。現代人が読んでも性描写が多くて赤裸々すぎるこの小説をよく70年代の大学側が受領したものだと驚きますが、文章のクオリティは非常に高い部類に入ると思います。

第4位 痴人の復讐(小酒井不木)


医師でもあったからか、著者の作品は医療関係者が主人公で、毒や実験、オペのミスなどによって人を殺すという話がほとんどです。しかもその誰もが異常なまでの恨みや執念を持って計画的に実行します。この小説も、人の心の恐ろしさをまざまざと読者に見せつけます。

第3位 風と共に去りぬ【1〜4】(マーガレット・ミッチェル)


もしスカーレットが単なる美人で傲慢なお嬢様で終わっていたら面白くもなんともない話だったと思いますが、この同性から嫌われるタイプの彼女がすべてを失い、なおもくじけず這い上がる姿を描いたからこそ、世の女性たちは逆に声援を送りたくなるのではないでしょうか。

第2位 満韓ところどころ(夏目漱石)


「こころ」などのシリアスな小説とは真逆の、つい笑いを誘われる旅行記です。漱石の昔も今も人が考えることや笑いのツボは基本的に同じなのだなと思えて著者が身近に感じますが、最後の自由すぎる終わり方には思わず「えーっ!」という声が漏れてしまうことでしょう。

第1位 斜陽(太宰治)


言葉の選び方、使い方が実に的確でなおかつきれいです。かといってお堅いだけではなく、時折下卑た文体や台詞も出てくるので、肩の力を抜き、時に少し笑いながら入り込めます。文字を読んでいるだけなのに映像がありありと浮かんでくる、全体的に美しい小説です。

編集後記

文学は、数式のように答えが一つというものではなく、読み手の数だけさまざまな答えと評価が存在するものです。したがって、文章上達の最たる近道は、自分の好きな作家の作風をまず真似て何かを書いてみることだと思います。スキルやオリジナリティなどは、その後から自ずと加えられてゆくものなのではないでしょうか。

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