近年、電車やバスなどで「ヘルプカード」の表示を見かけることが多くなりました。「ヘルプカード」のポスターを見かけたことがあるという方もいるでしょう。
しかし、まだこのカードにどんな意味があるのか、よく知らないという方も多いようです。
今回は、大人だけでなく子供たちにも役立つ「ヘルプカード」についてご紹介します。
「ヘルプカード」とは?
ヘルプカードは、以前から障害者団体などが独自に作っていましたが、あまり一般に知られていませんでした。しかし、2012年から東京都がマークを作成し、他の市区町村にも広まるきっかけとなりました。
デザインは赤地に、十字とハートが白抜きされたもので、バッグなどに取りつけることができます。身につけることで外見からは分かりにくい障害や病気、妊娠初期など、その人が何らかの困難を抱えていて、周囲の人の配慮や支援を必要としていることを示すことができます。
多くの市区町村の役所や保健所、障がい者相談支援センターなどで無料配布されています。ホームページでもデータが公開されていますので、印刷して自分で作ることもできます。
ヘルプカードの裏面には記入欄があり、症状や支援してほしいことを自由に書き込むことができます。
子供たちにも役立てたい「ヘルプカード」
では具体的に、子供たちに「ヘルプカード」を役立てるとしたら、どんなときでしょうか。
例えば自閉症や知的障害、パニック障害などを抱えた子がいても、外見からは分かりません。登下校中に何かあって本人が困っていたとしても、周囲からは困っているようには見えないことも多いものです。そんなとき、ヘルプカードが役立ちます。
カードの裏面にその子が抱えている障害を記入し、「会話を理解するのが苦手です。分かりやすい言葉でゆっくり話してください」とか「人とのコミュニケーションが苦手でうまく話せません」など書いておきます。緊急連絡先として親の携帯番号を書いておくとさらに安心です。
その他、子供が何らかの難病を抱えていて、万一のことが心配な場合もあります。例えば低血糖により意識を失ったり、倒れたりする病気を抱えている子の場合は、「倒れていたらすぐ救急車を呼んでください」とはっきり記入し、かかりつけの医療機関の名前や電話番号、親の携帯番号も記入しましょう。周囲の人に緊急性の高さが迅速に伝わる工夫が大切です。
「ヘルプカード」を広めよう
「ヘルプカード」が効果を発揮するためには、皆が「ヘルプカード」について知り、理解を深める必要があります。まず第一に、何を意味するカードか知っていないと、その人を助けることができません。
難しいのは、「ヘルプカード」を持っている人が求めている支援が、ひとりひとり異なるところです。身体的に辛くて、バスや電車で席を譲ってもらえると助かる人もいれば、パニックを起こしたときだけ助けてほしい人もいます。耳が聞こえないことで、災害時に的確な判断が難しくなり、状況説明を筆談でしてほしい人もいます。
周囲の人は自己判断せず、「どうかしましたか?」と尋ねてから、相手が求める支援をしましょう。
今後、「ヘルプカード」を知る人がますます増えていくことが望まれます。
※熊本日日新聞2019年1月19日「ヘルプカード 知ってる?」