男子の20人に1人、女子の500人に1人が先天性の色覚異常だと言われます。
つまり、およそ1クラスに1人は色覚異常の子供がいるのですが、学校において色覚異常に対する理解と配慮が進んでいるかというと、疑問です。
今回は、子供の色覚異常と、子供が色覚異常であるときの注意点や対策について考えます。
「色覚異常」の見え方は?
色覚異常は個人差が大きく、見え方や色の混同の程度も人それぞれ違います。軽度の場合、日常生活でほとんど不自由を感じないまま大きくなり、親も子も大人になるまで気付かない場合もあります。
学校で行う検査は簡単なものなので、正確な診断をするには眼科での検査が必要です。色覚異常のタイプが分かれば、その子が見分けにくい色が何なのかある程度分かります。見分けにくい色の例として、赤と緑、黄緑と橙、ピンクと水色、赤と黒などがあります。
現在、色覚異常に関しては有効な治療法はありません。ただし、悪化することもないと言われています。
注意点と対策
子供の色覚異常が分かったら、親は、その子が見分けにくい色を一緒に理解して、日常生活で困らないようサポートしてあげましょう。
色覚異常の子は、橙と黄緑の色の違いが分からずに、お絵かきで顔を黄緑で塗ってしまうことがあります。そういう場合は、クレヨンや色鉛筆の「だいだい」や「きみどり」の名を覚えることで対処しましょう。
右と左の靴下の色を間違えないように目印をつけたり、服を選ぶときは親子で選ぶようにしましょう。カレンダーの祝日の赤い文字が見づらいときは、マークをつけるなどの工夫も必要です。
「赤」は危険を知らせる色として使われることが多いですが、色覚異常の場合、赤を灰色と間違えたり、見えにくくて気づくのに遅れてしまうことがあります。特に雨が降っていたり、薄暗くなってきている夕暮れ時など、条件が悪いと赤信号を黄信号に見間違える恐れがあります。見る対象が小さかったり、急いでいてちらっとしか見ていなかったりすると、余計間違いやすいです。
お子さんには、自分が見間違いしやすい色をしっかり自覚させ、十分用心するように言って聞かせましょう。3つ並んだ信号の右が赤(止まれ)で、左が緑(進んでよし)と位置関係で覚えるのも有効です。
学校での対応
学校での対応ですが、残念ながら色覚異常に関して理解がある先生ばかりではありません。実際、色を間違えて先生に悪ふざけしていると思われて叱られたり、クラスメイトにからかわれたりということが起こっています。
保護者としては、学校の担任の先生に子供が色覚異常であることを前もって伝え、色を使った授業の一部が理解しづらいこと、緑色の黒板に赤色のチョークで書くと見づらいことなど具体的に知らせておきましょう。
今後、教育現場で色覚異常に対する正しい理解が進み、適切な配慮とサポートが得られるようになることが望まれます。
子供のうちに色覚検査を受けよう
以前は小学4年生を対象に行われていた色覚検査ですが、「差別につながる」などの意見があり、平成14年度から10年余り学校で検査を実施する義務がなくなっていました。
しかし、その時期の子供たちが大きくなり、就職や進学を機に初めて自分の色覚異常を知ってトラブルが続出しました。希望する仕事に就けなかったり、進学を諦めるケースがあったのです。
職業の中には、飛行機の操縦士や鉄道の運転士、消防士など、色覚制限がある職業があります。また、美容師やファッション関連などでは、どうしても色覚異常が不利になる現実があります。
そのため、近年は学校から保護者に色覚検査があることを知らせ、希望者には検査を行うように変わってきています。できれば小学校低学年など、早い段階で子供が自分の色覚の特性について知り、それを踏まえた上で将来の仕事を選択することが大切です。