近年、大人の間で風疹や麻疹などが流行して問題になっていますが、これらの感染症の中には、女性が妊娠中に感染すると重症化したり、胎児に影響するものがあります。予防のためには、妊娠前にワクチンで免疫をつけておくことが大切です。
妊娠中に感染するリスクについて知ろう
女性が妊娠中に感染すると重症化したり、流産や早産のリスクが高まる感染症はいくつもあります。また、妊娠中に感染することで胎児に悪影響が生じる感染症もあります。
例えば麻疹は、妊娠中に感染すると流産や早産のリスクが高まります。妊婦自身も重症化しやすいので注意が必要です。
風疹の場合、免疫がない女性が妊娠初期に感染すると、赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症するリスクが高くなります。主な症状は先天性心疾患、難聴、白内障ですが、その他にも様々な障害が現れることがあります。
また、水痘も妊娠中(8~20週目)に感染すると、約2%の赤ちゃんが先天性水痘症候群を発症します。赤ちゃんが低体重出生、四肢の形成不全、脳炎、小頭症、白内障などになるリスクがあります。
おたふくかぜの場合、妊娠初期に感染すると流産率が上がります。
生ワクチンの予防接種
麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜは、生ワクチンの予防接種があります。
生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料として作られます。病原体は弱ってはいますが、生きています。そのため、妊娠中は生ワクチンを接種することはできません。妊娠を希望する女性は妊娠前に生ワクチンの予防接種を受け、その後2カ月間は避妊することが推奨されています。
妊娠前に予防接種を受けた方が良いのは、その感染症にかかったことがない人や、予防接種の接種歴が不明な人です。また、その感染症の抗体価が不足している場合も受けた方が良いでしょう。抗体価は抗体検査を受ければ調べることができます。
風疹などに関しては、妊娠を希望する女性だけでなく、その配偶者も接種が勧められています。予防接種の費用を助成している地域もありますので、各自治体に問い合わせてみましょう。
不活化ワクチンの予防接種
妊娠中でも接種可能なのが不活化ワクチンの予防接種です。不活化ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の感染する能力を失わせた(不活化・殺菌)したものを原材料として作られます。生ワクチンと違って、免疫機能が低下している人にも使用できます。
インフルエンザや百日咳の予防接種が不活化ワクチンです。インフルエンザは、妊娠中に感染すると重症化しやすく、流産・早産のリスクが高まります。そのため、流行期に妊娠中の場合は、接種することが推奨されています。妊婦が予防することで、出産後、赤ちゃんのインフルエンザ予防にもつながるメリットもあります。
インフルエンザや百日咳は、乳児への感染を防ぐために、乳児の近くで過ごす父親やきょうだいもワクチンによる予防が推奨されています。
大人が予防接種を受ける場合、ワクチンの種類によっては対応していない医療機関もあります。まずは、問い合わせてみましょう。接種時期や必要性についても、医師と相談して決めましょう。