2018年5月、新潟で小学2年生の女の子が下校途中に連れ去られ、遺棄される痛ましい事件が起こりました。途中で友達と別れて、自宅まで200~300メートル。女の子は自宅近くで誘拐されたものと考えられています。
学校や保護者、さらに社会全体が、小さな子供たちを守るために今できることは何でしょうか?小学校で行われている防犯対策の例を見ながら考えてみましょう。
防犯システムを導入する学校が増えている
近年、ICタグを使って子供たちの登下校時間を記録し、通知する防犯システム「ツイタもん」を導入する小学校が全国的に増えています。
機器の設置・運用は大阪府にあるNPO法人「ツイタもん」が行います。導入するかどうかは、学校と保護者が協議して決定します。
子供たちがランドセルにICタグをつけて校門を通過すると、いつ、誰と校門を通ったか記録され、NPO法人と学校側で把握できます。校門には防犯カメラが設置され、登下校の様子を動画で確認できます。
保護者が希望すれば、登下校時刻を保護者にメールで通知するサービス(有料)も受けられます(月額400円ほど)。
子供たちへの声かけ・わいせつなどの事件が多く、導入を検討する学校が増えているようです。
また、大分市では市立小中学校82校の全教職員約2400人を対象に、公用携帯電話の貸与を決めました(2018年8月から導入予定)。2017年3月、大分県宇佐市のこども園に刃物を持った男が侵入した事件がきっかけとなったそうです。
これにより、不審者が学校へ侵入した際や、事故が起きたとき、現場からすぐに携帯電話へ一斉に連絡できるようになります。
防犯教室・訓練
学校が防犯設備を整えるのは良いことですが、それ以上に大切なことは、子供自身が危機意識を持って、自分で自分の身を守る方法を学ぶことです。学校では、担任の先生が授業で防犯について教えたり、警察署や民間企業から講師を招いて防犯教室を企画したりしています。
実際に使われる犯行の誘い文句を聞いて、子供たちに「自分だったらどうするか」考えてもらう良い機会です。誘拐では、子供の好奇心や親切心につけこむ誘い文句がよく使われます。「こんな言葉で声をかけられたら気を付けた方がいい」と知って行動するだけでも意識が変わります。もしものときはどう対処するべきか教え、シュミレーションするのも有効です。
また、近年は火災や地震の避難訓練だけでなく、不審者が学校に侵入した想定で訓練を行う学校も増えています。万一のことを考えて心構えしておくことは大切なことです。
子供の見守り活動
新入生が入学する際、新一年生全員に防犯ブザーや笛を配布する自治体が増えています。そうでなくても、入学時は保護者の危機意識が高く、子供に防犯ブザーを買って持たせる家庭が多いようです。しかし、その防犯ブザーが壊れたり紛失したりして、高学年になるにつれて防犯ブザーを持たない子が増えていきます。また、ランドセルにはつけているけれど、家に帰って外に遊びに行くときは持っていない子が多いのも問題です。
多くの学校で教師やPTAによる登下校の見守り活動や、交通パトロールなどが行われています。学校安全のためのボランティアを募り、パトロールをお願いしている学校もあります。通学路に「子ども110番の家(店)」を増やし、地域で子供を見守ろうとする動きも高まっています。
不審者情報があれば学校から保護者へ一斉にメールが配信され、注意喚起が行われることも多くなっています。保護者として何か気がかりなことがあったら、ちょっとしたことでも担任を通じて学校へ伝えましょう。それが子供を見守る保護者の目となり、地域の目となって子供を守ることに繋がります。
※熊本日日新聞総合版2018年4月26日「大分市 教職員に携帯貸与」