出産や子育てを支援する一般財団法人「1more Baby応援団」(東京)が2016年4月、全国の結婚期間が14年以下の既婚者を対象に調査したところ、2人目以降の出産をためらう「壁」が存在するとした回答が73.5%に上るという結果が出ました。
なぜ、「2人目の壁」が存在するのか、その理由を考えていきましょう。
2人目以降の出産をためらう理由は?
「1more Baby応援団」の調査によると、「経済的な理由」が84.4%、「年齢的な理由」が43%、「第1子の子育てで手いっぱい」が39.1%、「仕事上の理由」が37.2%と続きます。
経済的な理由の具体的な内容は、「今後も収入が上がる見込みがなく、2人以上の子育てに不安がある」「塾や習い事などの費用を十分確保したい」などで、子供に満足な生活や教育を受けさせたいと考えている親が多いことが分かります。
また、なかなか解消しない待機児童の問題のために、転居や就労条件変更など、子供を保育園へ入れるための「保活」をしなければならないことも大きな理由になっているようです。
「仕事上の理由」とは?
先ほどのアンケートの調査対象を「仕事をしている母親」に限ると、「仕事上の理由」を挙げる人が6割を超えます。妊娠・出産に対する職場の上司や同僚の理解が得られず、産休を取得しにくい環境があったり、出産後職場復帰できるか不安を持つ女性が多い現状があります。
現在問題となっているのが、妊娠・出産を理由に職場で不当な扱いや嫌がらせを受ける「マタニティーハラスメント」です。例えば「妊娠したら雇い止めに遭った」「正社員からパートへ切り替えを迫られた」「育休が取れない」などです。厚生労働省が2015年に実施した実態調査では、派遣社員の女性で48%、正社員でも21%がマタニティーハラスメントを経験したと回答しています。職場を気にして、妊娠のタイミングや報告時期を悩む人は多いと考えられます。
2015年3月には、「原則として妊娠・出産などから1年以内に不利益な取り扱いを受けた場合は違法」と労働局に通知されました。しかし、まだまだ職場の意識改革はこれからです。
「2人目の壁」を解消するために
「1more Baby応援団」の調査で、「2人目の壁」解消に必要な対策として望まれているのは「出産、育児費用、教育関連費用などの経済的なサポート」が81%、「休職や復職のしやすさなど仕事面のサポート」が45%、「長時間労働の短縮など自身や配偶者のワークライフバランスの改善」が44%となっています。
仕事との兼ね合いから妊娠・出産のタイミングを逃し、不妊治療をする女性が年々増えています。晩婚化が進み、子育てと親の介護が同時進行となるの「ダブルケア」で精神的にも体力的にも大変な思いをしている家庭もあります。
妊娠・出産と仕事を両立させるためには、夫や家族の協力はもちろん、女性が子育てしながら働きやすい環境を作らねばなりません。妊娠・出産後の長時間労働の解消や在宅勤務、短時間勤務の採用など、女性が望む働き方を選べる仕組み作りが必要です。そのためにも、職場の意識改革が最も重要になります。
加えて、保育所を増やして待機児童を減らすなど、公的サービスの充実も早急に望まれるところです。
【参考文献】
※熊本日日新聞総合版2015年6月17日「2人目出産ためらう 75% 既婚男女3千人調査」
※熊本日日新聞総合版2016年7月14日 教育費が「2人目の壁」
※熊本日日新聞総合版2016年7月12日「働くと産む 難しい両立」