角野栄子さんは「魔女の宅急便」で知られ、2018年4月、児童文学のノーベル賞ともいわれる「国際アンデルセン賞」に選ばれた児童文学作家です。日本人の作家賞受賞は3人目という快挙です。
多くの児童書を手掛け、絵本もたくさん出版されています。
ケンケンとびのけんちゃん
ケンケンとびのけんちゃん(角野栄子 作、大島妙子 絵、あかね書房、1995年)
お母さんのめいっぱいの愛情に包まれて、のびのびすくすく育つ「けんちゃん」の姿が微笑ましい絵本です。「けんちゃん」は元気いっぱいの男の子。時々は困ったこともあるけれど、ここに登場する「おかあさん」は「けんちゃん」のあるがままを認めて、息子がやりたいことを全力でサポートしています。こんなふうに子育てできたらいいなあと憧れてしまう内容です。
にぎやかで、明るく楽しい絵も楽しんで下さい。
サラダでげんき
サラダでげんき(角野栄子 作、長新太 絵、福音館書店、1981年)
小学校の教科書にも載っている絵本なのでご存じの方も多いでしょう。
病気のお母さんのために「げんきになるサラダ」を作ってあげようとする「りっちゃん」。そんなりっちゃんのために、いろんな動物がやってきてアドバイスをしてくれます。長新太さんはりっちゃんの家を外から見た絵を描き、ページをめくるとそこに次々別の生き物たちが登場するようにしました。そのため、ページをめくるとパラパラ漫画のような楽しみも味わえます。
話の展開にワクワクする楽しい絵本です。
ぼくのおとうと
ぼくのおとうと(かどのえいこ・いとうひろし 作、童心社、2009年)
弟ができた4歳のお兄ちゃんの気持ちを描いた絵本です。
ここに登場する「ぼく」はとってもいいお兄ちゃんですが、それでも弟(赤ちゃん)との単調な遊びにはやっぱり飽きてしまいます。
赤ちゃんは同じことを延々と飽きずに繰り返しますよね。それに付き合うのは親でも根気のいることです。
弟ができて、成長するお兄ちゃんの姿が印象的です。
イエコさん
イエコさん(角野栄子 文、ユリア・ヴォリ 絵、ブロンズ新社、2007年)
煙突のある赤い家「イエコさん」が、隠していた手足を伸ばしてエクササイズするという、なんとも奇妙な話にまずびっくりしてしまいます。
素直じゃない「イエコさん」の突拍子もない言動に振り回されて読者は混乱してしまいますが、次第に「イエコさん」の不思議な魅力に引かれていきます。「イエコさん」は、口は悪いけれど根はいいおばちゃんのようなキャラクターです。
物語の繰り返しのリズムが愉快で、ワクワクしながら楽しめる絵本です。
ようちえんにいくんだもん
ようちえんにいくんだもん(角野栄子 文、佐古百美 絵、文化出版局、2011年)
3歳の女の子のありのままの姿が描かれています。
もうすぐ通うことになる幼稚園にワクワクドキドキしたり、ちょっぴり背伸びをした受け答えをしたり、パパにおねだりする姿がとても可愛らしいです。
幼稚園を見学しに行ったり、幼稚園バスに乗ってみたり、幼稚園までママと手を繋いで歩いてみたり……。幼稚園を選ぶ際にやる色々なことが描かれているのもリアルです。
これから幼稚園に通うお子さんにおすすめの絵本です。
わたしおべんきょうするの
わたしおべんきょうするの(角野栄子 作、吉田尚令 絵、文溪堂、2017年)
女の子はごっこ遊びが大好き。兄弟姉妹がいなくても、ペットの犬やぬいぐるみ達と一緒におままごとしたりします。この絵本に出てくる「クリちゃん」もそうで、楽しいごっこ遊びがスタート。固定観念にとらわれない自由な発想が次々飛び出します。
のびのびとした子供の感性が魅力の絵本です。
これから文字を学習するお子さんにもおすすめです。
まんまるおつきさま おねがいよーう
まんまるおつきさま おねがいよーう(角野栄子 作、くりこ 絵、ポプラ社、2009年)
山田養蜂場主催「子どもたちのためのミツバチの童話と絵本のコンクール」最優秀絵本賞受賞作品です。「いるか いないか わからない」けれど、確かに存在する「ケムリンさん」。ここに登場する「ケムリン」さんとは、目には見えない善意や優しさの化身のようなものでしょうか。
温かく、可愛らしく、それでいてデザイン性に優れたくりこさんの絵が素敵です。優しさに溢れるストーリーに、心が癒されます。
ぼくびょうきじゃないよ
ぼくびょうきじゃないよ(角野栄子 作、垂石眞子 絵、福音館書店、1994年)
楽しみにしているイベントがある日に体調を崩して行けないなんて、子供にとってはこんな悲しいことはありません。「ぼく 病気じゃないよ」と嘘をつきたくなる気持ちも分かります。
この絵本ではくまのお医者さんが「ケン」君に「くま式」の治療法を教えてくれます。大きくてリアルなくまが白衣を着てメガネをかけた姿は滑稽で笑いを誘います。でも、「ケン」君は病気を治したくて一生懸命なんですね。
お子さんが風邪を引いたときに読んであげたい1¥一冊です。
あかちゃんがやってきた
あかちゃんがやってきた(角野栄子 作、はた こうしろう 絵、福音館書店、2009年)
ママが妊娠して、赤ちゃんが生まれる。その時、上の子はどんな気持ちになるでしょうか。
ここに登場する「ぼく」は、お母さんから赤ちゃんが生まれると聞いてびっくり!それからはどんどん膨らむお母さんのお腹を眺めながら、期待と不安が交錯する毎日です。遊び相手ができる喜び。赤ちゃんに対する嫉妬。「ぼく」の心は複雑ですが、笑いも交えて楽しく描かれています。
弟や妹が生まれるとき、上の子へ読んであげたい一冊です。
わがままなおにわ
わがままなおにわ(角野栄子 作、メグ ホソキ 絵、文溪堂、2006年)
ハヤミさんは庭のある古い一軒家に住んでいます。その庭は草がものすごいはやさで伸びるので、ハヤミさんは困っています。何とか綺麗な庭にしたいと思っているのですが、全然うまくいきません。まるでハヤミさんは庭の草花とケンカしているようです。
そこに奇跡的な出来事が起きて庭が生まれ変わるのですが、読んでいると子育てに通じるものを感じます。命令しても言うことを聞かない、思い通りにはならないのが子育てです。本人たちの意思を尊重することが大切なのだと教えてもらった気がします。
編集後記
角野栄子さんの作風は明るく前向きで、ユーモアに富み、読む人を元気にする力があります。子供に対する深い洞察と愛情が伝わってきて、大人にこそ読んでほしいと思える絵本もたくさんあります。親子で是非手に取って、絵本を楽しんで下さい。