2017年3月、東京都の生後6ヵ月の男児が乳児ボツリヌス症で死亡しました。離乳食としてはちみつを摂取したことが原因と報告されています。
家族は、乳児にはちみつを与えてはいけないことを知らなかったと話しているそうです。
今回は、はちみつが原因となる乳児ボツリヌス症についてまとめます。
乳児ボツリヌス症とは?
乳児ボツリヌス症とは、1歳未満の乳児がボツリヌス菌芽胞を口から摂取することで発症します。主な原因食品ははちみつであり、その他コーンシロップや黒糖にもボツリヌス菌芽胞が紛れ込んでいる可能性があります。
1歳未満は菌の繁殖を防げるほど腸内環境が整っておらず、体内に入ったボツリヌス菌が腸管内で増え、毒素を出し発症します。症状は便秘、哺乳力の低下、泣き声が小さくなるなどで、重症化すると呼吸困難や呼吸停止に陥り、まれに死亡することがあります。
統計によると、1986年以降国内での発症は30例以上報告されていますが、死亡に至ったケースは今回の東京都の生後6ヵ月男児が初めてです。
今回のケースでは、発症の1ヵ月前から家族が離乳食として1日2回、計10gのはちみつをジュースに混ぜて飲ませていたといいます。長期間、かなりの量を摂取してしまったことで、赤ちゃんの感染リスクが高まってしまったようです。
診断と治療
乳児ボツリヌス症は、赤ちゃんの便や血液の中にボツリヌス菌が存在するかどうかどうかで判断します。治療は呼吸管理や輸血をして症状を軽減させる対処療法です。近年は抗体を投与する集中治療を行うこともあります。
ほとんどの赤ちゃんが後遺症もなく完治しますが、感染した赤ちゃんの便には長期間ボツリヌス菌が入っていることがあるので、オムツ交換などで2次感染しないよう、手洗いをしっかりやりましょう。
予防するために
1歳未満の赤ちゃんにはボツリヌス菌芽胞が混入している可能性があるはちみつ、コーンシロップ、黒糖を摂取させないよう徹底しましょう。ボツリヌス菌芽胞は熱に強く、加熱してもなかなか死滅させることができないと知っておきましょう。
今回の食中毒による死亡を受け、消費者庁などは改めて注意を呼びかけていますが、まだまだ周知徹底には至っていません。厚生労働省ははちみつ入りの飲料やお菓子などの食品も1歳未満の子には与えないように注意し、食品業者には、消費者に分かりやすい注意表示を促しています。
しかし、インターネット上でははちみつを使った離乳食レシピが注意喚起なしに投稿されている場合があり、注意が必要です。
授乳中の母親がはちみつを食べても問題はありませんが、はちみつをテーブルに置きっぱなしにしたり、手についたまま赤ちゃんに触れたりすることがないよう、赤ちゃんの誤食には十分気をつけましょう。市販の食品にはちみつが入っていることがあるので、買ったものを赤ちゃんに食べさせる場合は原材料をしっかり確認しましょう。
万一、赤ちゃんが誤ってはちみつを食べてしまった場合は、便秘などの症状が出ないか注意深く見守りましょう。用心のため、食べて1ヵ月は異常がないか気を配りましょう。もし何か気になる症状が出たら、すぐに小児科へ連れて行くようにして下さい。
【参考文献】
・乳児ボツリヌス症とは?はちみつにボツリヌス菌がいるの?症状は?
※熊本日日新聞総合版2017年4月8日「蜂蜜原因 6ヵ月男児死亡」
※熊本日日新聞総合版2017年4月28日「1歳未満に蜂蜜厳禁」