はじめて酒井駒子さんの絵を目にしたときの印象は強烈でした。なんて美しい絵を描く人だろう。そう思ったのを覚えています。絵の美しさにひかれて絵本を手に取り、子供のちょっとした仕草や表情の捉え方の上手さにまた感動しました。

酒井駒子さんが絵を担当し、文章を他の作家さんが担当する絵本もありますが、その世界観がぴったりと一致するとき、相乗効果で素晴らしい絵本が生まれます。

よるくま

よるくま(酒井駒子 作、偕成社、1999年)

酒井駒子さんの代表作です。
これから眠りにつこうとする男の子とお母さん。男の子はお母さんに「よるくま」のことを語り始めます。男の子の言葉に優しく耳を傾けて、頷いたり問い返したり、眠る前の穏やかなひと時が目に浮かぶようです。
母親の愛情と、のびのびとした自由な想像力を感じさせる素敵な絵本です。
酒井駒子の初期の作品で、絵のタッチが明快で幼児にも分かりやすいです。

金曜日の砂糖ちゃん

金曜日の砂糖ちゃん(酒井駒子 作、偕成社、2003年)

第20回世界絵本原画展金牌受賞作品です。
一枚一枚、とても美しい絵画のような絵なので、じっくり眺めたくなります。ゆっくり読んでいくうちに、現実の世界からファンタジーの世界へ紛れ込んでしまったような不思議な気分に浸れます。
幻想的で美しい絵本です。子供よりは大人向けの絵本と言えるでしょう。

くまとやまねこ

くまとやまねこ(湯本香樹実 ぶん、酒井駒子 え、河出書房新社、2008年)

死別の哀しみと、時が流れることによってもたらされる癒しがテーマの絵本です。
少しぼかしが入ったようなモノトーンの世界の中で、一色だけ明るいピンクの色が光り輝いています。深い悲しみの中から立ち上がり、一歩踏み出す「くま」の姿が感動を呼びます。湯本香樹実さんが随分長い時間をかけて作った作品というのも頷けます。
酒井駒子さんが描く絵からは、濃密な時間の流れが感じられます。今にも美しい音色が聴こえてきそうです。

きつねのかみさま

きつねのかみさま(あまんきみこ 作、酒井駒子 絵、ポプラ社、2003年)

日本絵本賞受賞作品です。
姉と弟の幼いきょうだいが公園に忘れ物を取りに行くところから物語は始まります。
子供たちの楽しそうな笑い声に誘われて、不思議な世界に迷い込むシーンが魅力的です。ちょっとした冒険のようなドキドキが味わえます。
子供たちももちろん可愛らしいのですが、この絵本に登場する子ぎつねたちの可愛らしさは格別です。
優しさや思いやりを教えてくれる、心が穏やかになれる素敵な絵本です。

しろうさぎとりんごの木

しろうさぎとりんごの木(石井睦美 作、酒井駒子 絵、文溪堂、2013年)

優しい家族に見守られて、すくすく育つ子うさぎの話です。
読み始めてすぐに印象的な言葉が出てきます。「ちいさいいえでしたけれど、しろうさぎにとってひつようなものは、なんでもそろっていました」というものです。
裕福でなくとも、愛情深い父母のいる家庭です。子うさぎは子供らしい好奇心を持って、のびのびと育っていきます。母親との対話を通して、いろんなことを学び、大きくなるのです。
子供にとって必要なものとは何か。考えさせられる絵本です。

はんなちゃんがめをさましたら

はんなちゃんがめをさましたら(酒井駒子 作、偕成社、2012年)

柔らかい伝聞調の語り口が耳に心地よい、穏やかな気持ちになれる絵本です。
子供のあどけない仕草が可愛らしく、いつまでも眺めていたくなります。
真夜中の話ですが、ここに描かれる暗闇は全く恐ろしくありません。「はんなちゃん」も、夜の静寂を怖がることなく、むしろ自分一人の時間を存分に楽しんでいる様子です。
「はんなちゃん」からずっと離れずついて回る黒猫の存在も心象に残ります。

ゆきがやんだら

ゆきがやんだら(酒井駒子 作、学習研究社、2005年)

子供の頃、雪を見たときのワクワクドキドキがいっぱい詰まった絵本です。
酒井駒子の描く雪の世界、音のない世界が情感あふれる質感で美しく、胸に迫ります。
「ぼく」が呟く、「ぼくと ママしか いないみたい、せかいで。」という言葉が印象的です。母親と子供だけの閉鎖的な世界で、子供にとって母親がどれだけ大きい存在なのか考えさせられます。
静寂に包まれた、美しく音のない世界はまるで異世界のようです。

ロンパーちゃんとふうせん)

ロンパーちゃんとふうせん(酒井駒子 作、白泉社、2003年)

酒井駒子さんの描く子供の絵はとても愛らしく、ちょっとした仕草や表情など、生き生きとしていて素晴らしいです。子供をとても魅力的に描く作家さんだと思います。
母親と子供のやり取りや、風船を相手におままごとをする様子など、子育て中のお母さんは共感する部分も多いと思います。
子供に対する温かい眼差しを感じる絵本です、

ビロードのうさぎ

ビロードのうさぎ(マージェリィ・W・ビアンコ 原作、酒井駒子 絵・抄訳、ブロンズ新社、2007年)

――心から大切に大事に思われたおもちゃは、本当のものになる……。
物語の前半に語られるこの言葉が印象に残ります。昔大事にしていたおもちゃを思い出す方もおられるかもしれません。
酒井駒子さんの美しく幻想的な絵が想像力をかき立てます。
ストーリーの展開がしっかりしているので、ドキドキしながら話の先を知りたくなります。情愛に溢れた、心に残る物語です。

ヨクネルとひな

ヨクネルとひな(LEE 文、酒井駒子 絵、ブロンズ新社、2015年)

絵と文章から、子猫の体温や軟らかさ、か細い感触まで伝わってくるようで、そのリアルな表現力に驚かされます。
読んでいくと、最初はその猫を飼うことに不満を持っていた「ひなちゃん」が、どんどん猫を好きになっていくのが分かります。ペットへの愛情や責任感が芽生え、急に成長する「ひなちゃん」の姿が印象的です。

編集後記

酒井駒子さんの絵は絵画的で美しく、絵本を開いた人が思わず手を止めて見入ってしまうような魅力があります。何気ない日常の中から、後に大切な思い出になるような一瞬を切り取り、それを絵に描く力は素晴らしいです。
子供だけでなく、大人にもおすすめの絵本作家です。

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