妊娠中や授乳中に使った薬が、赤ちゃんに何か悪い影響を与えないだろうか?
母親が抱く疑問に専門の医師や薬剤師が助言する「妊娠と薬情報センター」が国の事業としてスタートして、今年で10年になります。
今回は「妊娠と薬情報センター」についてご紹介します。
赤ちゃんへの薬の影響
例えば市販の解熱鎮痛薬の注意書きを見ると、「妊婦または妊娠していると思われる人」、「授乳中の人」は「服用前に医師、歯科医師、薬剤師または登録販売者に相談してください」とあります。風邪などで体調を崩して病院を受診し、薬をもらうときも、「妊娠・授乳中の人は申し出て下さい」と言われることが多いものです。
このように、妊娠・授乳中は軽々しく薬を服用したり使ったりできません。頭痛があったり風邪を引いても、妊娠中は薬を飲まずに我慢したというお母さん方も多いのではないでしょうか。また、妊娠・授乳中のため、通常よりは効果が弱い、赤ちゃんへの影響を考慮した薬に変更してもらったという方もあるかもしれません。
しかし、もともと持病があり、薬をやめるのが難しい女性もいます。妊娠・授乳中にインフルエンザなどの急病になり、どうしても強い薬を使う必要が生じて、赤ちゃんへの影響を心配することもあるでしょう。そのような女性の相談に乗り、妊娠出産をサポートするのが「妊娠と薬情報センター」です。
妊娠と薬情報センター
「妊娠と薬情報センター」のホームページを見ると、「ママのためのお薬情報」として、妊娠・授乳中に「安全に使用できると思われる薬」と「授乳中の治療に適さないと判断される薬」の表が載っています。妊娠・授乳中に薬を使うかどうかで悩んだときは、参考にされてください。
授乳中、母親が使ったほとんどのお薬は「母乳中に移行するけれども、その量は非常に少ない」ことが知られています。ですから、お薬を飲んでいるお母さんが必ずしも母乳をあげることを諦めなくてはいけないわけではありません。また、母乳をあげるために必ずしもお薬をやめる必要もありません。薬の情報を詳しく知り、主治医の先生と相談しながら決めていくことが大切です。
センターへの相談方法は①電話相談②「妊娠と薬外来」での相談(全国に33拠点病院あり)③主治医のもとで相談の3つの方法があります。詳しくは「妊娠と薬情報センター」のホームページで確認してください。
今後の研究
日本国内では、まだまだ薬の赤ちゃんへの影響に関するデータが少なく、薬を使うか使わないか判断が難しい場合が少なくありません。しかし、持病がある女性が薬をやめて病気が悪化すれば、妊娠や育児自体が不可能になってしまいます。
日本女性の出産年齢は年々上がっており、出産が遅くなるほど慢性疾患のリスクも上がっていきます。大切なのは、何がお母さんと赤ちゃんにとって総合的にプラスになるかです。
センターでは、その薬が現在、妊娠中の投与に関する安全性が確立されていなくても、「薬の量と成分の特性上赤ちゃんへの影響は考えにくい」と判断する場合があります。赤ちゃんと母親へのリスクとメリットを慎重に考えて助言する方針です。
妊娠と薬情報センターでは、「女性たちに日本のデータを基に助言したい」「将来は薬の添付文書にも内容を反映させたい」と考え、相談者の妊娠の経過を追う研究を続けています。最新の情報や、これまでのデータに基づく助言が得たい方、身近な主治医や薬剤師から納得できる回答が得られない方など、相談してみると良いでしょう。