安野光雅さんは、数学や文字に関する優れた良書だけでなく、多種多様な美しい絵本を描かれています。だまし絵や切り絵など、作者独特のユーモラスな絵本がたくさんです。
10人のゆかいなひっこし 美しい数学Ⅰ(安野光雅 作、童話屋)
数を学べる絵本はたくさんありますが、安野光雅さんが作ったこちらの絵本は一味違います。単純に数を唱えるのではありません。ページをめくることで、自然と「10」という数を分解して、子供に数と量の感覚を身につけさせる内容になっています。
美しい絵と楽しいしかけの絵本を眺めているうちに、自然と足したり引いたりという概念を学んでいける優れた絵本です。
はじめてであう すうがくの絵本(1)(安野光雅 作、福音館書店)
数学の奥深さ、楽しさについて、噛み砕いて具体的に表現してある良書です。
数式を暗記したり、単純に覚えるだけでは、本当の理解に繋がりません。計算の過程、答えが出るまでの筋道を軽視すると、数学(算数)嫌いにもなりかねません。
この本は、数学の面白さを読者にたくさん見せてくれます。「どうしてかな?」「こうしたらどうなるのかな?」と時間をかけて、じっくり読み、辛抱強く考えることが大切です。
数学に興味を持つきっかけになる絵本です。
あいうえおの本(安野光雅 作、福音館書店)
お子さんが「ひらがな」に興味を持った時期に是非読んでほしい絵本です。
「あ」なら「あんぱん」や「蟻」の絵だけかと思ったら、周囲に美しい飾り絵があって、その中にもアザミ、アシカ、アヒル……と、たくさんの「あ」から始まる動物や植物の絵が細かく描かれています。
無数の工夫がちりばめられ、読む度に新しい発見がある楽しい絵本です。大人も一緒に楽しめます。
もりのえほん(安野光雅 作、福音館書店)
緑の葉が茂った木々、大きく黒い立派な木の幹……。ページをめくってもめくっても森の情景が続きます。すると、ん?なんだが木々の中にぼんやり動物の姿が!驚いてよく見ると、パンダやフクロウ、猫など次々と見つかります。一体どれだけの動物が隠れているのか気になって、絵本を開いた状態でじっと見入ること間違いなしです。
しっかり見ないと見落としてしまうほどの見事な隠し絵です。子供と一緒に是非探してみましょう。皆さんは、何匹の動物を見つけることができるでしょうか?
あいうえおみせ(安野光雅 作、福音館書店)
「あいうえお順」と「いろは順」で、色々なお店が並んでいます。飴屋、石焼き芋屋、運送屋……といった感じです。多種多様なお店がたくさん並んでいて、見ているだけで楽しい絵本です。今ではなかなか見かけないようなお店や、「こんなお店あるの?」と笑ってしまうものまで色々です。売られている品物やお店の人の姿格好にも注目です。
大人でも楽しめる絵本です。読むと、「しりとり」に強くなれるかも?
かげぼうし(安野光雅 作、冨山房)
雪が降る西洋の街並みが美しいです。それと並行して描かれる「かげぼうし」の国は、複雑な切り絵のモノトーンの世界。しかし、とても賑やかで魅力に満ちた世界です。
いま私たちが生きている世界のすぐ近くに、全く異なる異次元の世界があったら?ちょっと怖いような、ワクワクするような気持ちを味あわせてくれる、夢に溢れた絵本です。
読んで、「かげぼうし」の国についていろいろ想像してみると楽しいでしょうね。
もじあそび(安野光雅 作、福音館書店)
対象年齢は4歳からになっていますが、内容をしっかり理解して楽しめるのは小学校低学年くらいからではないでしょうか。ひらがなに興味を持ち、文字を並べて単語を作ったり、並び替えたりして遊べるようになったら部分的に楽しめるでしょう。
クロスワードなど、文字遊びが好きな小学校1〜2年生くらいにおすすめです。
言葉に興味を持つきっかけになる絵本です。
ふしぎな たね(安野光雅 作、童話屋)
倍数の計算を感覚的に学べます。最初は単純な計算ですが、男が実った種を蓄えたり売ったり、人に渡したりし始めると、どんどん計算が複雑になっていきます。
数学を楽しく学べるだけでなく、農作物が増えることで生まれる「商業」や、天災に備えるための蓄えの大切さなど、「現実の世界のしくみ」についても学べる優れた絵本です。
算数を楽しく学びたいお子さんにおすすめです。
さよなら さんかく(安野光雅 作、講談社)
本をパラパラとめくると、逆さまの絵と文章がたくさんあって、とても不思議な絵本です。理由は、「さよならさんかく」のわらべ歌を最後まで歌い終わって最終ページに来たら、絵本を逆さまにしてまた最初のページまで歌いながら戻れるように作ってあるとのこと。安野光雅さんならではの面白いしかけの絵本です。
昔から引き継がれてきた「わらべうた」が、これからも歌い継がれていくことを願って作られた絵本です。
懐かしいような、情緒あふれる絵が魅力です。
かぞえてみよう(安野光雅 作、講談社)
幼児向けの数の絵本です。数を覚え始めたばかりで、感覚的に数の概念がまだしっかり身についていないお子さんや、数を覚えたてのお子さんが確認するために読んであげると喜びます。
家の数を数える絵本ですが、家が建つ周囲の情景が徐々に変化していく様子も楽しく、四季の移り変わりも美しいです。飽きることなく何度でも開いて見たくなります。
慣れてきたら家の数だけでなく、人や家畜の数なども数えてみると、良い学習になります。
編集後記
いかがでしたか?
安野光雅さんの絵本は、時間をかけてじっくり楽しみたい絵本ばかりです。奥が深く、美しく細やかに描かれた絵は、何度見ても飽きることがありません。読む度に新しい発見があって驚きます。
子供から大人まで幅広い世代に愛される絵本がたくさんあります。
今回は10冊おすすめしましたが、ここに紹介したもの以外でも優れた良書がたくさん出版されています。残念ながら在庫切れや絶版で、現在ではなかなか手に入りにくい本も中にはありますが、その場合は図書館などで探してみて下さい。