噂?それとも本当の話?
こんな話を聞いたことはありませんか?保険会社は新車要求を認めない。「聞いたことがない」という方もいるでしょうから、ちょっと噛み砕いて説明したいと思います。
私が念願の新車を購入したとします。毎日「このシートの匂い。やっぱり新車はいいなあ」とうっとりしています。ところが、納車して三日後、駐車中に運転席ドアを思い切りぶつけられていました。ぶつけた人は誠実な方で「まだ三日!?保険を使って新品と交換しますから」と言ってくれました。私は「当たり前だよ!」と言いつつホッとしました。運転席だけ他の部分と色合いが異なる塗装をされたらたまったものではありません。だいいち、ミソがついた車に乗りたくありません。すると、加害者の保険会社から連絡があり、こう言いました。
「新車と交換できません。修理してください」。
確かに修理できますが、ローンも組んで購入したのですから、保険会社が買い取って、別途新車を納車してもいいと思いませんか?ちょっと人間不信になりそうな発言です。果たして、これは噂なのか、本当の話なのか?ということですね。
本当です。
では、何故、新車と交換してくれないのか理由を説明したいと思います。
前例無き新車賠償
私が保険業界に入りたての頃、上司に質問したことがあります。「何故、新車要求は認められないのか?」と。上司は言いました。「そういった判例が無い。法的な場でも新車要求を認める条件が厳しいから」。では、一体どういう条件があるのでしょう?
- 購入から三ヶ月以内であること。
- 走行距離が3000km以内であること。
- 主たる構造装置に致命的な損傷を受けていること。
この三つは裁判所の考え方です。つまり、保険会社が認めないからといって法的な場で争っても非常に厳しいということです。1と2だけ見ると「新車と交換して当然」と思えますが、3が難関ですね。乱暴な例えですが、大破しても、修理して運行に問題がなければ認めないというわけです。この記事を書くにあたって「今でも新車要求が認められた判例はないのだろうか?」と調べてみましたが、平成26年5月現在、見当たりませんね。
なお、保険会社によっては「ナンバープレートが付いた時点で中古」という理由で認めないそうなのですが、それはちょっとひどいですね。オーナーの気持ちも察して欲しいと思います。
泣き寝入りすればいいの?
不可能を可能にしたいと思うのは誰しもそうですが、生活に支障をきたしてしまってはいけません。かといって、泣き寝入りも考えものです。ここは、新車を要求して延々と争うより、修理費用と下取り時の評価額をどれだけ補償してくれるか交渉した方が合理的です。
ただ、格落ち損害における交渉でも、「こうなんです!」という事故担当者はいます。私は保険業界にいましたが、こういった詭弁めいた発言には否定的です。担当している事故の数は想像以上に多いでしょうが、もう少し噛み砕いて説明するべきだと思います。なので、そういったときのために、別記事で触れた弁護士費用特約を付けていると安心できるかも知れませんね。
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<ライター:森村仁>