第2回本屋大賞受賞作品です。
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。朝の8時に学校を出発し、80キロを歩いて翌朝の8時までにゴールを目指すという何とも無謀な伝統行事。全校生徒1200人が、間に休憩と仮眠を取りながらひたすら歩く。
読んでみて一番驚いたのは、全篇通して高校生たちがひたすら歩くだけだということです。特に目立った事件は何も起こりません。それなのに面白い。
それぞれの高校生たちが、このイベントに対して強い思い入れを持っています。仲の良い友達と歩きたい。好きな人に声をかけたい。何か思い出を作りたい。長く歩いて、歩いて、夜も深まってくると、友人達の意外な本音が飛び出します。普段の学校生活では話す機会のない、こんなときでなければ絶対話さないような個人的な話を、夜の闇の中でついつい語ってしまうのです。
大人は読んで懐かしい気持ちにもさせられます。中学・高校生も、大人も楽しめる小説だと思います。
※『夜のピクニック』恩田陸、新潮文庫、平成18年