皆さんは「産後クライシス」という言葉を聞いたことがありますか?
この言葉は2012年、NHKの「あさイチ」という番組で提唱され、使われるようになりました。
産後2年以内に夫婦(特に女性側)の愛情が急速に冷え込むという現象で、離婚の大きな原因の一つになっています。
今回は、「産後クライシス」の原因と対策についてご紹介します。
産後クライシスとは?
平成23年度に厚生労働省が日本の母子家庭を対象に行った調査によると、子供(末子)が0~2歳のときに離婚したケースが最も多く、全体の35%を占めています。つまり、産後2年間が最も離婚率が高い時期に当たるのです。
また、ベネッセ次世代育成研究室が行った追跡調査「はじめての子どもを出産後の夫婦の愛情の変化」によると、妊娠期は夫婦ともに74%が「配偶者を本当に愛している」と答えていますが、その後夫婦ともに配偶者への愛情がぐんと下がります。特に女性は顕著で、子供が0才の時点で30%も愛情が落ち込み、2歳児期では配偶者を愛していると実感している妻は全体の34%という結果です。同時期、男性は51.7%という結果が出ています。
このように、産後2年以内に急速に夫婦仲が悪化し、特に女性側の愛情の冷え込みが激しいことが分かります。
原因
産後クライシスの原因は様々ですが、ひとつは産後の妻の体調不良が考えられます。出産は女性にとって体への負担が大きく、産後もかなり長い間体調が回復しません。出産を機に体質が変わって病気がちになったり、太りやすくなったり、ホルモンバランスの崩れによって心身に不調が生じる場合もよくあります。
本来、産後はゆっくり体を休める必要があるのですが、赤ちゃんが生まれたその日から母親は育児に追われ、なかなか休む暇がありません。数時間おきの授乳、オムツ交換。夜は夜泣きで睡眠時間が削られ、安全面から少しも赤ちゃんから目が離せません。慣れない育児で体力的にも精神的にも消耗していく母親は珍しくありません。
そんな中、夫が育児をやってくれない、またはやってくれても要領が悪くイライラするなど、夫への不満を募らせ夫婦仲が悪化する原因となっているようです。
対策
「産後クライシス」を乗り越えるために、大切なポイントがあります。
まず、夫が「産前産後のリアル」に対する予備知識を持っていることが重要なのだそうです。つまり、出産によって妻の心や体がどう変化していくのか。夫婦間でどのような問題が生じやすくなるのか。楽しいばかりではない育児の実態についてなど、出産後に起こり得る変化を受け入れるための予備知識を夫が持っているかがポイントです。予備知識を得るには、産婦人科や行政が開催する「両親学級」や「父親学級」に参加すると良いでしょう。
次に大切なのは、夫婦間のコミュニケーションです。言いたいことを我慢せず、具体的にどうしてほしいのか、きちんと言葉にして伝える努力をしましょう。お互いの立場を理解し、相手を思いやる気持ちを忘れないようにしましょう。
「夫婦間の対話の不足」はすれ違いを増やし、事態を深刻なものにしてしまいます。育児や家事、仕事、今後の人生プランなど、夫婦間でしっかり対話できる関係を作っていくことが、夫婦間の危機を救います。
たまには実家を頼って夫婦で会話する時間を作ったり、妻のストレス発散の時間を作るなど、心にゆとりを持てるように工夫してみましょう。