「RSウイルス感染症」は、大人にとっては軽い風邪症状で終わっても、初感染の乳幼児にとっては重症化するリスクがある怖い病気です。
しかし、この感染症に関しては認知度が低く、正しい知識の普及が求められています。
RSウイルス感染症とは?
SRウイルス感染症は、通常秋から早春にかけて、乳幼児を中心に流行する病気です。しかし、5年ほど前から流行が早まり、今年は既に7月から患者が増加傾向にあります。潜伏期間は2〜8日で、症状は風邪と似ています。1歳までに50%が、2歳までほぼ100%が初感染すると言われています。
インフルエンザ同様、生涯を通して何度も繰り返し感染しますが、感染を繰り返すと症状は軽くなると言われています。初感染の場合40℃くらいの熱が出て、鼻水や咳の症状が出ます。そのうち2〜3割が気管支炎や肺炎になり、重症化すると亡くなるケースもあります。
注意すべきこと
感染した場合、大人は軽い風邪症状で済んでも、初感染の乳幼児にとっては重症化するリスクのある怖い病気であることを知っておきましょう。
注意したいのは、感染初期は軽い風邪のような症状であることが多く、RSウイルス感染症と普通の風邪を見分けるのは難しいことです。普段から子供の様子を見ていて、「いつもの風邪とは違う」「おかしい」と気づくことが大切です。例えば、高熱がいつまでも下がらない、苦しそうな咳をしているなど、おかしいと思ったら病院を受診しましょう。RSウイルス感染症かどうかは、現在は簡単な検査で診断できるようになっています。
RSウイルス感染症による重症化リスクが高い人は次の方です。
- 乳幼児
- 早産児
- 先天性心疾患がある子ども
- ダウン症児
- 出産したばかりで体が弱っている産婦
- 高齢者
乳幼児でも特に新生児〜生後6か月以内の赤ちゃんは重症化しやすいので、予防が大切です。重症化すると呼吸不全・中枢神経の異常(けいれんや脳炎)・心筋炎・無呼吸発作などが起こることがあり、最悪の場合亡くなります。
予防と治療
RSウイルスは唾液や鼻水を介してうつります。咳やくしゃみなどによる飛沫感染、飛んだ唾液が手などを介して口に入る接触感染に注意が必要です。多くは家族や保育園、人が集まるイベント会場などでうつります。
予防のためにはマスク、手洗い、うがいが大切です。
インフルエンザと比べ、RSウイルスの重症化リスクを認識している親は少なく、鼻水や微熱程度では子供を登園させる保護者が多いです。これが感染拡大の要因のひつとになっています。また、乳幼児の世話をする大人が風邪気味のときは、RSウイルス感染症の可能性も考慮して、うつさないよう感染予防に努めましょう。
予防と治療に関しては、現在抗ウイルス薬などの治療薬や予防ワクチンはなく、発熱や咳を抑える対症療法だけです。重症化した場合は入院したり、人工呼吸器を使ったりします。
ただし、重症化する危険性が高い早産児やダウン症児には、重症化を防ぐ薬として抗体薬「パリビズマブ」の使用が認められています。
※熊本日日新聞総合版2017年8月18日「乳幼児の初感染に注意」