加古里子さんは日本の代表的な絵本作家の1人です。作家としての活動期間も長く、扱うテーマも幅広いです。例えば古き良き日本文化を細やかに伝える絵本、動物や虫が賑やかに活躍するユーモアあふれる絵本の他、科学絵本なども多数手掛けています。
懐かしく味わい深い絵が魅力で、長く愛されている絵本作家です。
からすのパンやさん(加古里子 作、偕成社 1973年)
この絵本には無数のカラスが登場しますが、1羽一羽の個性的で生き生きとした表情が見事です。加古里子さんが、一羽一羽手を抜くことなく愛情を持って描いているのが分かります。
焼かれたパンがとても美味しそう!びっくりするようなパンもたくさん並んでいて、絵本を見た子供たちは大喜びです。
この絵本を気に入った方には、同シリーズの「からすのおかしやさん」もおすすめです。
おたまじゃくしの101ちゃん(加古里子 作、偕成社 1973年)
おたまじゃくしの 101ちゃん (かこさとし おはなしのほん( 6))
ハラハラドキドキするお話の展開が気になって、子供が夢中になる絵本です。
命がけで子供を守ろうとする母親(カエル)と、お母さんを助けようとする子供(おたまじゃくし)たちの気持ちに胸が熱くなります。
ところどころ歌が入るので、軽快に歌ってリズムを楽しんで下さい。
たくさんのおたまじゃくし達の動きや表情がとても魅力的です。
あかいありとくろいあり(加古里子 作、偕成社 1973年)
あかいありと くろいあり (かこさとし おはなしのほん( 5))
子供たちは公園や道端で蟻の行列を見つけると興奮して立ち止まります。それは今も昔も変わらない風景のようです。
この絵本は、あめ玉に群がる蟻を見て大騒ぎしている子供たちの様子から着想を得て作られました。人情味あふれる下町の人々のような赤アリと、ユーモアあふれる黒アリの姿が笑いを誘います。いっぱい集まって大きなお菓子を運ぶ蟻の姿には、大人でも感動してしまいますね。
あおいめ くろいめ ちゃいろのめ(加古里子 作、偕成社 1972年)
あおいめ くろいめ ちゃいろのめ (かこさとし おはなしのほん( 1))
この絵本には3人の子供たちが登場しますが、それぞれ色の違う色紙を組み合わせて作られています。配色やデザインが抜群で、3人の子供たちの豊富な表情に目が引きつけられます。表情の変化は、丸く切った色紙の配置を変えたり、ハサミでカットしたりして作られているというので注目です。
加古里子さんが子供会の美術指導で色紙を丸く切って教えたところからできたというこちらの絵本。眺めるだけでも楽しいですが、この本を参考に自宅で色紙をハサミで切って、子供たちと遊んでみるのも楽しいと思います。
とんぼのうんどうかい(加古里子 作、偕成社 1972年)
とんぼの うんどうかい (かこさとし おはなしのほん( 2))
加古里子さんの絵本の魅力は、子供目線の自由な想像力です。
運動会を楽しんでいたら悪い「ぎゃんぐこうもり」が現れてさらわれたり、みんなで協力して悪者をやっつけたり……。この絵本を読んでいたら、子供たちが自由におままごとしたりストーリーを作って遊ぶ様子を思い出しました。きっと、どうやったらお話が面白くなるか、こんなキャラクターが登場したらきっと楽しい!などという子供たちの心を深く理解しているのだと思います。
子供が共感して楽しめる絵本です。
どろぼうがっこう(加古里子 作、偕成社 1973年)
泥棒が主役の、型破りでユニークな絵本です。
40年以上前に出版され、当時は「幼稚園や学校の先生から怒られるのではないか」と作者が心配したほど常識外れの絵本だったようです。しかし、作者の心配をよそに、お父さん方には好評だったそうです。
石川五右衛門を連想させるようないかつい校長先生に強面のおじさんたちが生徒という「どろぼうがっこう」。先生と生徒の掛け合いが漫才のようで笑えます。
にんじんばたけのパピプぺポ(加古里子 作、偕成社 1973年)
にんじんばたけの パピプペポ (かこさとし おはなしのほん( 8))
加古里子さんがニンジン嫌いの子のために作った作品です。
この絵本には子ブタが20匹登場しますが、それぞれ表情豊かで個性を持った生き生きとした表情が素晴らしいです。
発想が豊かで、子供のような自由な想像力が魅力の絵本です。
子ブタたちがみんなで力を合わせると、驚くような立派な仕事ができるものだと感心してしまいます。
ゆきのひ(加古里子 作、福音館書店 1966年)
一年の半分近くを雪と共に過ごす雪国の様子、雪国の子供たちの様子を描いた作品です。50年以上前に出版された絵本ですので、今とは随分生活様式が異なっているでしょう。昔懐かしい雪国の暮らしが細やかに描かれていて、「かんじき」「せっぴ」「かまくら」など、雪国ならではの言葉がたくさん出てきます。雪が珍しい地方で暮らす子供たちには想像もできないような驚きの生活です。
子供たちが雪の深い地方の暮らしに興味を持ったら読んであげたい1冊です。
だるまちゃんとてんぐちゃん(加古里子 作、福音館書店 1967年)
「だるまちゃんシリーズ」の1作目です。
息子の願いを叶えようと一生懸命な「だるまどん」の奮闘ぶりが微笑ましいです。家族みんなの協力を得ながら、納得するまで妥協しない「だるまちゃん」の姿が子供らしい子供として共感を呼びます。
団扇や帽子、靴など、いろんな種類の物がずらりと並んで、眺めているだけでも楽しい絵本です。読みながら、「どれが好き?」などと言って選んでも楽しいですね。
気に入ったら、シリーズの他の本も読んでみて下さい。
ぬればやまのちいさなにんじゃ(加古里子 作、復刊ドットコム 2014年)
ぬればやまのちいさなにんじゃ (かこさとし むかしばなしの本 4)
あとがきで加古里子さんが「女でも男でも、人間であり生きているからには、やさしさと同様、時には強さやたくましさや激しさが求められることがある」と書いているように、とても厳しい敵討ちの物語です。
度重なる試練を乗り越え、意志を貫く主人公の姿から、皆さんは何を感じるでしょうか。
対象年齢は小学校低学年くらいからです。
編集後記
加古里子さんの絵本は物語の展開が面白く、子供を惹きつけて離さない魅力に溢れています。話が二転三転することも多く、先が読めない展開に大人までワクワクしてしまいます。
これまでに600冊以上の本が刊行され、多くの読者に愛される個性を持ったキャラクターがたくさん生まれています。お子さんが1冊の絵本を気に入ったら、他のシリーズや別のテーマを扱った本も是非手に取ってみて下さい。