近年、朝食を毎日食べていない小学生が増えているそうです。
2018年度の文部科学省調査「全国学力・学習状況調査」によると、朝食を「毎日食べる」と答えたのは84.8%。15%の小学生は朝食を毎日食べる習慣がないと答えています。
そんな中、朝食抜きの子供たちに学校で朝食を提供しようという取り組みが注目されています。
朝ごはんを食べない子供達
朝食を食べたり食べなかったり、あるいは全く食べない子供たちが増えていることが問題になっていますが、問題は子供たちのすべての食事に当てはまります。
核家族化が進み、共働き世帯が増え、子供が1人で食事をとる「孤食」も増えています。家族が別々に好きなものを食べたり、いつも同じものばかり食べるなど、偏食も問題になっています。
家庭の経済的困窮や親の繁忙も、子供たちが朝食を抜いてしまう原因です。現在、日本では子供の7人に1人が貧困状態にあります。親が早朝から働いていて家に居ないなど、労働環境の変化も子供たちが朝食を食べられない原因になっていると考えられます。
朝食と学力・運動能力の関係
文部科学省の「全国学力・学習状況調査」によると、朝食を毎日食べる子に比べて、食べない子のテストの成績が小中学校とも各教科で低い傾向が続いています。体力テストも同様で、朝食を食べない子ほど得点が低い傾向になっています。
運動はもちろんですが、頭を使うときにもエネルギーが必要です。朝ごはんを食べないと、授業中にめまいやだるさを感じたり、先生の話を聞いても集中できなかったり、様々な悪影響があります。
朝食をしっかり食べると、体温が上がり、しっかり目が覚めた状態で活動することができるようになります。血糖値が上がることで体と脳にエネルギーが補給され、ホルモンの分泌が促されて体調を整えることができます。
しっかりエネルギーを補給し、体や脳を働かせるためには、炭水化物やビタミン類、タンパク質や鉄など、バランスよく食べることが大切です。朝から甘い菓子パンだけ食べたりすると、低血糖になって元気が出なくなってしまいます。朝食の内容にも気を配る必要があります。
「学校朝食」の取り組み
現在、「学校朝食」の取り組みは、各地に広がりつつあります。
例えば大阪市立西淡路小学校では、週3回、朝の7時半から家庭科室で学校朝食を提供しています。食べたい子は誰でも歓迎で、1食50円という低額で温かい朝ごはんが食べられます。地域のボランティアが集まり、大阪府の補助金とフードバンクからの提供食材などを使ってまかなわれています。
子供たちには好評で、遅刻が減少したり、授業で積極的に発言する子が増えるなど、効果が実感できているそうです。異なる学年の児童同士でコミュニケーションが生まれたり、地域のボランティアのおばちゃんたちと一緒に時間が過ごせることも楽しいようです。
いつも一人で食べて寂しい思いをしている子にとっては、みんなで楽しく朝ごはんを食べる時間は充実した時間です。気持ちが満たされ、ほっとするのではないでしょうか。いつも同じものばかり食べている子にとっては、食育としての意味も大きいでしょう。
「学校朝食」を実現するためには、人材の確保と費用が課題です。学校との信頼関係も欠かせません。この課題を乗り越え、広島県や高知県の一部でも「学校朝食」が始まっています。検討中の自治体も増えつつあり、今後が注目されます。
・朝食の摂取と学力との関係(子どもの生活習慣づくり関連データ)