くすのきしげのりさんは、元小学校教諭ということで、小学生が主人公の絵本をたくさん創作されています。
子供たちが持つ様々な悩み、心の揺らぎがリアルに描かれていて、考えさせられる内容です。
今回は、くすのきしげのりさんの絵本の中から10作ご紹介します。
Life(ライフ)
「Life(ライフ)」はリユースシステムのお店の名前です。訪れる人は自分が使わなくなったものを置き、気に入ったものがあれば持って帰ります。
訪れた人が品物に添えるメッセージカードが素敵です。人の想いが巡り巡って、繋がっていく様子が奇跡のようです。
人は、人との関わりの中で生かされ、生きている。そのこと実感できる素敵な絵本です。
対象年齢は、小学校中学年以上です。
おこだてませんように
絵本に登場する「ぼく」は、家でも学校でも怒られてばかり。でも、「ぼく」がやっていることは、悪気があってやっているわけではないし、意地悪をしているわけでもない。ただ楽しくてやりすぎてしまったり、良かれと思って嫌がられたり、大人の都合に合わないから怒られる。
やんちゃな男の子を育てている母親がドキリとするような絵本です。
小学校低学年の男の子は、自分の気持ちを相手に伝えるのが苦手な子も多いです。傷ついたり、思い悩んでいる子供たちの気持ちに寄り添ってあげたいと思える絵本です。
うでのいいくつや
ある王国に腕のいい靴屋がありました。しかしその店では、息子と父親が靴の作り方で対立しています。傲慢で父親を敬うことを知らない息子に、父親はある方法で大切なことを伝えます。
話の構成がしっかりとしていて、それぞれの登場人物の個性が魅力的です。
父と息子の難しい関係が劇的に変わるところが見所です。
対象年齢は小学校低学年からです。
みずいろのマフラー
小学生の人間関係は大人と同じように複雑です。
勉強やスポーツの成績などからお互いの優劣を意識したり、言い返せない性格の子に嫌な役を押し付けたり……。ケンカや失敗、反省を繰り返しながら、子供たちはたくましく成長していきます。
本当の友達とは何か、考えさせられる絵本です。
絵本の主人公と同じ年代の小学生におすすめの絵本です。
泥かぶら
「泥かぶら」は、1952年から長年日本全国、さらには海外で公演されてきた舞台劇を絵本化したものです。
人は本来、美しい真心を持っていて、心についた泥を落とせばそれが表れる。優しく、美しい心は優しい真心を呼び、次々にそれが連鎖していく。
人が生きる上で大切なことは何かを教えてくれる絵本です。
ふくびき
お母さんにクリスマスプレゼントをあげたい小さな姉弟は、商店街で福引をすることにします。
子供たちの母親を想う気持ちや、お姉ちゃんの正直であろうとする心が素晴らしいです。それを見守る周囲の大人たちの優しさも心に沁みます。
子育て中の親として、作中のようなプレゼントを子供たちから貰ったら、嬉しくて忘れられない日になるでしょう。
心温まる素敵な絵本です。
「ごめんなさい」がいっぱい
「ごめんなさい」がいっぱい(くすのきしげのり 作、鈴木永子 絵、PHP研究所、2016年)PHPわたしのえほん
「子どもの言動の背景には、じつにさまざまな状況や要因が隠れている」と作者のくすのきしげのりさんは言います。そして、「先入観のない素直な心で子どもと向き合うことを忘れないようにしたい」と。
この絵本を読むと、勝手な思い込みで子供を判断することの危うさに気づきます。見た目だけでは分からないことがあるのだと意識することが大事ですね。
大人にこそ読んでほしい絵本です。
へなちょこ
縄跳びが苦手な「ともちゃん」。他の運動は得意なだけに、縄跳びもできると嘘をついてしまいます。
プライドが邪魔をして強がってしまったり、嘘をついてしまうのは子供にはよくあることです。嘘を責めずに相手の気持ちを思いやる友達の「あいちゃん」が素敵です。
同年代の子供たちが共感する内容だと思います。
ふるしょうようこさんの絵が個性的で可愛らしく、印象に残ります。
いまからともだち
いまから ともだち(くすのきしげのり 作、たるいしまこ 絵、東洋館出版社、2018年)学校がもっとすきになる絵本シリーズ
この絵本に登場する「はるかちゃん」は転校が多い子です。前の学校では友達ができませんでした。今度は田舎の小さな分校に通うことになりますが……。
全学年で生徒が5人、先生は1人という学校のため、ひとりひとりの距離が近く、はるかちゃんはこれまでにない環境に最初は戸惑います。でも、みんなの親切で優しい態度に次第に打ち解けていきます。
友達を作るために必要なのは、ほんの少しの勇気だと教えてくれる絵本です。
小規模校の良さも描かれています。
はしれ、ゴールのむこうまで!
いちねんせいの1年間 はしれ、ゴールの むこうまで!(くすのきしげのり 作、稲葉卓也 絵、講談社、2015年)講談社の創作絵本
教育熱心で子供たちのことが根っから大好きな校長先生が登場します。
走ることに苦手意識を持っている1年生の「そうた」。その苦手意識をどうやったら変えられるか。そこで校長先生が取った行動は?
「どうせできいない」と思っていたら、できることもできなくなってしまいます。そんな子を身近で励まし、応援してくれる存在は大きいです。
稲葉卓也さんの描く登場人物たちの表情が豊かで面白いです。
編集後記
くすのきしげのりさんは、学校教育の中で実際に起こることを多く題材にしています。子供たちは様々な悩みや葛藤を抱えながら日々頑張っているのだと思うと、その成長を応援したくなります。
子供たちの親としても、教育者としても、くすのきしげのりさんの絵本から学ぶべきことは多いです。