長新太さんは独特の感性と大胆でユニークな絵が人気の作家さんです。
大人が読むと意味が分からなくて「???」となることも多く、「ナンセンスの神様」とも呼ばれています。しかし、子供たちは長新太さんのナンセンス絵本が大好きです。
ユニークで奇抜な発想が癖になるという大人の読者も多いようです。
ごろごろ にゃーん(長 新太 作・画、福音館書店、1984年)
「ごろごろ にゃーん ごろごろ にゃーんと、ひこうきは とんできます」。ほぼこのフレーズの繰り返しで、全ページ青っぽい色で統一された奇妙な絵本です。
しかし、この絵本には大人には理解しがたい魅力があるようで、小さな子供たちには人気です。自由な想像力と意外性が詰まっていて、よく見ると驚くような発見があります。お子さんと一緒に見つけて楽しんで下さい。
キャベツくん(長 新太 文・絵、文研出版、2002年)
キャベツくんはブタヤマさんに食べられたくありません。苦し紛れに「僕を食べるとキャベツになるよ!」と言います。
さて、そこからが楽しい想像の世界です。ヘビやタヌキやゴリラがキャベツを食べたらどうなるの?広い空にキャベツと合体した変な動物たちが次々と浮かびます。
空の雲を眺めていたら、それが動物の形に見えたり、食べ物に見えたり、なんてことがありますよね。想像力をかき立てられる、子供が大好きになる絵本です。
ぞうのたまごのたまごやき(寺村輝夫 作、長新太 画、福音館書店、1984年)
ぞうのたまご?大人はすぐに「そんなものはない」と気づきますが、幼稚園児くらいだと結構信じちゃう子もいるようです。物語の中で、王様に命じられて象の卵を探しに行く兵隊たちの話を真剣に聞いてくれます。象の卵があると信じて、大変な思いをしながら探し回る大臣や兵隊たち。ちょっと可愛そうだけれど、滑稽で笑ってしまいます。象の卵があると信じてお話を聞いていた子供たちも、最後には「あっそうか!」と納得のお話です。
なにをたべたかわかる?(長新太 作、絵本館、2003年)
びっくり仰天、奇抜なお話です。
話の展開が意外過ぎて、読み終わった後、なんと言っていいか分からない不思議な感情が残ります。
猫に担がれている魚の表情が飄々としていて面白いんですが、だからこそ、怖さが倍増するような気もします。
最終的に、表紙の猫がなぜあんなに丸々と太っているのか分かってまたびっくりです。
きもち(谷川俊太郎 文、 長新太 絵、福音館書店、2008年)
絵本の半分以上に文章がなく、絵だけで様々なシーンが描かれています。文章がないため、絵から情報を読み取るしかありません。そのため、読み手は絵の状況や登場人物の表情に自然と注目して見るようになります。
これはどういう状況なのか。この男の子はなぜ泣いているのか。一体どんな気持ちなのか。多くを語るより、読み手に深く考えさせる力のある絵本です。
ドオン!(山下洋輔 文、長新太 絵、福音館書店、1995年)
やんちゃで、手が付けられないほどのいたずらっ子っていますよね。この絵本に登場する鬼の子ドンと、人間の子こうちゃんがそうです。
ついに親から「でていけ!」と追い出された2人が出逢って、鬼VS人間の盛大なけんかが始まります。
この絵本はどんどん叩き手が増える太鼓の音が楽しく、読み終わると気持ちがスッキリする絵本です。けんかしていたと思ったら、何かの拍子に急に笑い出して仲直りすること、子供にはよくあることですよね。子供目線の愉快な話を楽しんで下さい。
おしゃべりな たまごやき(寺村輝夫 作、長新太 画、福音館書店、1972年)
卵焼きが大好きな王様がしでかした大騒動で、お城中が大騒ぎです。
ここに登場する王様が、なんともお茶目でユーモラスで、憎めないキャラクターなんですね。悪いことをしてしまったことを隠そうとしてコソコソしているところは、まるで小さな子供です。
果たして、王様は嘘を隠し通せるのでしょうか?びっくりするような結末をお楽しみください。
サラダでげんき(角野栄子 作、長新太 絵、福音館書店、2005年)
小学校の国語の教科書にも載っているお話です。
病気のお母さんに何かしてあげたいという「りっちゃん」の一生懸命な気持ちが伝わってきます。たくさんの動物たちが入れ替わり立ち替わり訪れて、まじめな顔でアドバイスをしてくれるところがユニークで面白いです。思いがけない展開にもびっくり!
最後のページで登場人物が全員並んでポーズをとるシーンも楽しい。読むと元気になれる絵本です。
ろくべえ まってろよ(灰谷健次郎 作、長新太 絵、文研出版、2005年)
深い穴に落ちてしまった犬の「ろくべえ」を、小学校一年生の子供たちが助けようとします。見開きのページを縦にして描くことで、穴がどれだけ深いか、子供が下りて助けることは到底無理な深さであることをうまく表現しています。
みんなで一生懸命「ろくべえ」を元気づけよう、助けようといろいろ考える子どもたち。
最後、大人に頼らず自分たちで何とか助けようと決意した子供たちの顔が、とても凛々しく見えます。子供たちの諦めない姿勢に心打たれました。
ぼくのくれよん(長新太 作、講談社、1993年)
縦30㎝の大きな絵本で、タッチが大胆で色鮮やかです。簡単で分かりやすい内容なので小さい子供たちに人気です。
絵本の中でぞうさんが大胆にのびのびと絵を描く様子を見ていると、子供たちもお絵かきがしたくなるようです。子供らしい自由な感性を大切にしてあげたくなる絵本です。
編集後記
長新太さんが文章と絵の両方を担当している絵本は独特の感性がユニークな絵本です。また、他の作家さんが文章を担当し、それに長新太さんの絵がうまくマッチしたときは、全く別の魅力ある絵本が生まれています。是非、他の作家さんとのコラボ作品もお楽しみください。