日本人の和の心の象徴、着物。たおやかで美しく、繊細な生地は、いつの時代も見ているだけで心がときめき、うっとりします。
洋服と違って、和服である「着物」はどんな収納ケースを選んだら良いのでしょうか?
収納ケースの選び方を中心に、着物の収納について紹介していきます。
4つの、守る
着物の収納で大切な「守る」ポイントは4つ。
- 虫から守る。
- 湿気から守る。
- シワや型崩れから守る。
- 金糸や銀糸、箔など、繊細な装飾を守る。
これらの条件をを満たしている収納ケースや衣装箱であれば、着物の収納は安心です。
じゃあ、うちは桐を使っている箪笥だから大丈夫!何も手を掛けなくてもいいのね!?…いえいえ、それだけでは、綺麗な着物も困ってしまいます。着物は防虫や乾燥など、人が手伝ってあげる事…「少しの工夫」で美しく保つ事ができるのです。
着物といえば、桐箪笥?
昔からの花嫁道具と言えば、多くの人が思いつくのは桐箪笥なのではないでしょうか。桐箪笥は古くより幾つかのメリットがあると言われています。
- 通気性が良い
- 虫が付きにくい
- 家事が起きても燃えにくい
- 軽い上に丈夫で、多少の傷なら復元できる力がある
近年では輸入木材の増加、森林面積の減少などもあって、国産の桐は少なく、だからこそ、桐100パーセントの箪笥は高価ですが、たいへん貴重です。総桐ではなくとも、一部分に桐材が使われていれば、そのパワーが発揮できます。特に外箱に桐材が使われている物は防湿効果が高いと言われています。
着物はほとんどが絹から出来ていますから、収納には、天然の絹が安心できる、桐などの木製の箪笥が相性が良いのは納得です。昔から家に伝わる桐箪笥を見つけた方は、ぜひ、これからも末永く大切にしていきたいですね。
衣類用のブラスチックケースでも大丈夫?
現代人の主流はプラスチックでできた衣装ケースです。これの良い所は、下記です。
- インテリアショップやホームセンターで安く大量に購入できる。
- 形が同じでシンプル、透明で中身も見える物が多いので揃えやすい。
- 置きやすく、クローゼットの中や押し入れの下など、場所を選ばない。
ケースの形が同じなので、洋服と着物を同じ場所に置く、ということもでき、使いやすい収納ケースと言えます。ただし、ご存じの様に、プラスチックは「通気性」が全くありませんので、気をつける点も出てきます。
- 直射日光はNG。日光がケースを通して生地に直接当たりやすいので変色、変質の心配がある
- 同じ形なので、たくさんあると中身が分かりにくい。分かりやすくラベルを貼ることが必要
そこで、収納を工夫をしてあげる必要が出てきます。
- たくさん詰め込みすぎない
- こまめに空気を通す
- 防虫、防湿をしっかり行う
これらに気を付け、生地の状態にも気をつけるようにすれば、上手に着物を収納する事ができます。
お茶箱、段ボールは、アリ?
着物の収納で昔からよく使われている物に「お茶箱」があります。
これは、「一度蓋をしてしまえば、外からの湿気を防ぐ」という点では完璧なのですが、反対に着物に付いてくるような、「外から持ち込まれた湿気は外に漏らさない」という完璧さ故の難点も抱えています。
また、中に金属の板が酸化してしまうと、それがかえって着物を傷める事もあり、お茶箱はあまりおすすめしません。
お茶箱と並んで、段ボールや紙箱に着物を収納する事も考えられますが、湿気による劣化が早いのと、虫の付きやすさを考えると、紙箱や段ボールも避けた方が良いでしょう。
畳み方と防湿・防虫
木製でも、プラスチック製でも、着物の収納の方法は変わりません。
桐の箪笥でも、ずっと閉め切っていれば、湿気がこもってカビが生えますし、プラスチック製の衣装ケースはいっぱい入るからと、詰め込んでは、型くずれしますし、湿気ももちろんこもります。
絹糸は天然素材。生きています。
天然の物ですから、自然と風も水分もよく含みますし、虫も付きやすく、カビも生えやすいのです。なので、一度で完全に防ぐ為には、化学の力が必要ですし、それは一方で生きている生地を傷める事にもなります。
着物の素材の特徴を知って、それに従って味方に付ければ、着物とより長く付き合うことができます。
縫い目に沿って、四角く畳む
着物は畳んで仕舞いましょう。
掛けると絹の生地は伸びてしまうので、虫干しの時を除いては長時間掛けないようにします。
着物は縫い目に沿って広げると、長方形を重ねたような形です。着物をはじめ、和服は、床に広げて美しくたためるように形が整っています。畳む時は、着物を置く床を綺麗にし、布やゴザ、紙があればその上で畳んでも良いでしょう。畳む際も、手は洗って拭いて、余分な水分や油分が着物に移らないようにします。
主な畳み方の順序は、下記です。
- 脇の縫い目を整え、胴が真っ直ぐになるようにします。
- 全体の形はそのまま、両方の衿付、衽を縫い目に沿って折り返すように畳みます。
- 手前の衽に片方の衽を重ねて合わせます。(衿を合わせる。)
- 背中の縫い目に合わせ、両袖を脇の縫い目に合わせて重ねて畳みます。
- 袖をそれぞれ内側に畳み、身ごろの上に重なるようにします。
- 適度な大きさ(衿下、袖下など)で半分に折ります。物差しを入れて折ると綺麗にできます。
- たとう紙でくるみます。収納ケースやたとう紙の大きさに合わせて「6.」で長さを調節しましょう。三つ折りにしたり、裏返して袖下でもう一度折ったりします。
最後に白木綿を中敷きに敷いて、たとう紙に包んだ着物を入れれば完成です。仕舞うときは、互い違いに重ねて入れ、多くても5枚までにしましょう。
この時に少し裾がたとう紙からはみ出すようにして仕舞うと、一目で分かりやすくて便利。たとう紙の上にくるんだ着物の写真を貼っても良いでしょう。また、刺繍や金箔、金糸銀糸が使われている物は、色移りや変色を防ぐため、その部分に和紙を被せて保護をしましょう。
防湿は、通気性と晴天の日の虫干しがポイント
着物湿気をこもらせない方法は、「良く取り出す事」。つまり、頻繁に取り出して着ている場合ほど、湿気がこもりにくくなります。しかしさすがに『それは無理〜』な場合がおそらくほとんどなので、着た時と同じように、着物に空気を取り入れてあげます。
それには、下記などの方法が挙げられます。
- 1週間〜数週間に一度、箪笥の引き出しを握り拳1つ分程開けて、箪笥の中に風を通す。
- 良く着る洋服と一緒に収納ケースに着物を入れて、洋服を着る度に空気が着物に通るようにする。
これらの方法と乾燥剤か除湿剤を併用すると良いでしょう。
除湿剤は防虫剤に比べて生地を傷めにくいので、積極的に使うことができます。梅雨時や夏場などは、さらに除湿器を使うのもオススメです。そして、年に1〜3回は虫干しをしましょう。
できれば、夏(7〜8月)、秋(10〜11月)、冬(1〜2月)の良く晴れた日を選んで正午を挟み3〜4時間ほど、直射日光の当たらない部屋で、風通しを良くし、光と風を充分に浴びせてあげるのがベストです。プラスチックの収納ケースの場合は回数を増やしても構いません。
着物は、一枚ずつ衣紋掛けに裏返して、中にこもった湿気を飛ばします。その時に、引き出しやケースの中の掃除もします。中敷きやたとう紙を新しい物に変え、糸くずや塵などもきれいに取り除き、引き出しやケースも日光に当てて乾燥させ、清潔な状態で再び着物をしまうようにします。
防虫剤は天然の物を使いたい
基本的に防虫剤は1ケースに1箱です。着物の生地に直接触れないよう、四隅に置きましょう。メジャーな樟脳やナフタリンなどは、においも独特でそれが苦手な方も多いと思います。効き目も強力なので、そのぶん生地を傷めることもあり、除湿剤・乾燥剤との併用で着物の変質を起こすこともあり、使うときは1種類のみ独立して使いたい防虫剤です。ただし、シリカゲルは一緒に使っても大丈夫なようです。
心配な場合は天然の物などを使いましょう。ウコンで染めた風呂敷、別の袋に入れたシナモンスティックやポプリ、新聞紙のインクなど(この場合は敷いて使いましょう)防虫の効果があるそうです。
【参考サイト】
着物屋女将「スタイルUPレッスン」:Vol.34 目からウロコのきもの収納
http://www.kimonohanabusa.co.jp/lesson/
和服の手入れ/保管方法
http://www.kimono-taizen.com/teire/teire_04.htm
保管・収納のポイント |きもの(着物)のさが美
http://www.sgm.co.jp/useful/keeping/index.html
着物つれづれ。 保管方法について①
http://yukitokimono.blog.fc2.com/blog-entry-35.html
志お屋 きもののたたみ方
http://www.e-shioya.com/teire/tatami_kimono.html
www.aizukiri.or.jp/ouendan/untiku.html
http://www.aizukiri.or.jp/ouendan/untiku.html