谷川俊太郎氏は詩、絵本、翻訳など幅広く活躍している方で、その作品数は膨大です。
絵本作家としては詩や文、翻訳を担当され、他の追随を許さない個性的な作品が多数出版されています。
今回は、谷川俊太郎氏が詩や文を描いている絵本の中から、おすすめの作品を10作ご紹介します。
もこもこもこ(谷川俊太郎 作、元永定正 絵、文研出版、1977年)
赤ちゃんから就学前のお子さんにおすすめの絵本です。
「もこもこ にょき」などの擬音語がすべてで、言葉の響きに合うカラフルで抽象的な絵が並んでいます。正直大人にはその魅力が伝わらないことが多いのですが、小さな子供たちは驚くほどこの絵本に食いつきます。
特に1~4歳くらいの子供たちに大人気で、何度も読んで!と頼まれる絵本です。大人には分からない幼児の感性を知ることができる絵本です。
いちねんせい(谷川俊太郎 詩、和田誠 絵、小学館、1988年)
小学校に入学したての1年生は何を考えているのかな?お母さんやお父さんと離れて、学校で文字を習い始めて、勉強を教えてくれる先生のこと、どう思っているのかな?
読んでいると子供の頃を思い出して懐かしい気分になれます。思いがけない子供の感覚にびっくりするかもしれません。子供にとって、きっと世界はいろんな不思議に満ちているのでしょう。
言葉遊びが楽しい絵本です。是非声に出して読んでみて下さい。
ままです すきです すてきです(谷川俊太郎 文、タイガー立石 絵、福音館書店、1992年)
タイガー立石さんの絵がユーモアあふれるしりとり絵本です。
しりとりの言葉遊びのセンスが独特で、一文や擬音語も交じりつつしりとりが続き、不思議な世界を作り出しています。中でも鬼の男の子の姿が面白くて印象に残ります。ちょっと不気味なシーンも楽しんで下さい。
自由で縛りのない言葉遊びの絵本です。
これは のみの ぴこ(谷川俊太郎 作、和田誠 絵、サンリード、1979年)
この本は黙読すると魅力が分からない絵本なので、是非音読してください。
ページを開く度にどんどん文章が長くなっていくので、おのずとチャレンジ精神を刺激されて、ついつい本気で読んでしまいます。声に出して読んでいるうちに気分が高揚し、次第にリズムができてきます。間違えずに一息でスラスラ読めたときの気分は爽快です。
後半に行くほど文章が長くなり、一息で言うのは難しくなっていきますが、チャレンジしてみると楽しいですよ。
よるのびょういん(谷川俊太郎 作、長野重一 写真、福音館書店、2006年)
子供は救急車が好きですが、救急車は事故で怪我した人や病気になった人を病院に運ぶこと、場合によっては手術することもあるということを、あまりリアルに考えたことがない子が多いです。だから、この写真絵本を読むとびっくりして「怖い」という子がたくさんいます。
この絵本を読むと、病気の子を助けるためにどれだけ多くの人びとが関わっているのか、病院でもいろんな種類の仕事があることを知ることができます。緊迫した状況が写真からひしひしと伝わってきます。
きらきら(谷川俊太郎 文、吉田六郎 写真、アリス館、2008年)
この写真絵本には、顕微鏡で撮影した雪の結晶がたくさん載っています。雪の結晶は、基本は六角形ですが、気温や湿度によってその形は無限に変化するそうです。大きさも1ミリ以下から5~6ミリになるものまでさまざまで、自然の不思議に驚かされます。
美しい写真に、子供たちの好奇心を引き出すような言葉が添えられていて、何度でも眺めたくなる絵本です。
ともだち(谷川俊太郎 文、和田誠 絵、玉川大学出版部、2002年)
友達って、どんな人?これを言葉で説明するのはなかなか難しいです。決まった答えはありませんし、人によって解釈も様々でしょう。この絵本では、「ともだち」のことを、幼い子供にも分かりやすい言葉で語ってくれます。
読んで、いろんなことを考えさせられる絵本です。中には素直に受け止められない言葉もあるでしょう。そんなときは親子で話し合ってみましょう。
友達がいることは、とても幸せなことですね。
あな(谷川俊太郎 作、和田誠 画、福音館書店、1983年)
ただ掘りたくなったから、穴を掘る。ひろしは「なにもすることがなかったので」、穴を掘り始めます。そこにいろんな人が来て声をかけますが、穴を掘る理由や目的なんてどうでもいいんです。
上下に繋がった見開きの絵が、パラパラ漫画のように進行していきます。淡々とした和田誠さんの絵によって、「ひろし」の感性が余計に際立って見えます。
ここに登場するお父さんも素敵です。
生きる(谷川俊太郎 詩、岡本よしろう 絵、福音館書店、2017年)
谷川俊太郎氏の美しい詩に、家族の夏の一日、何気ない日常を描いた絵が見事にマッチした絵本です。
日常の中の幸せ、過ぎていく時間の大切さ、今が未来へと繋がっていくこと、命……。読むと、日々の些細な出来事や家族との時間がどれほど大切か実感します。
今を大切に生きたいと思える素敵な絵本です。
あっはっは(谷川俊太郎 作、堀内誠一 絵、くもん出版、2009年)
文章は全て「あっはっは」や「ぷんぷん」などのオノマトペだけでできている絵本です。オノマトペの一つ一つと、堀内誠一さんの大胆なタッチの絵が見事にマッチしています。
シンプルで分かりやすく、小さいお子さんにおすすめの絵本です。
男の子と女の子の生き生きとした表情に注目してください。
編集後記
谷川俊太郎氏の作品は型にはまらず、自由でのびやかなところが魅力です。大人が成長とともに失ってしまいがちな、子供特有の感性をずっと持ち続けていらっしゃる方なのだと思います。
幼児向けの絵本は個性的で、言葉遊びが楽しく、読んだ子供たちが言葉の魅力に魅せられてしまいます。言葉の楽しさを子供に教えてくれる絵本です。
子供だけでなく大人でも楽しめる絵本、考えさえられる絵本がたくさんあります。是非手に取って読んでみて下さい。