近年、小中学校において「通級指導」を受ける児童が増えているといいます。
この「通級指導」とはどんなものなのでしょうか。
また、「通級指導」が現在抱えている課題についても考えます。
「通級指導」とは?
通級指導とは、比較的軽度の障害がある児童が週に数回、在籍する普通学級を離れ、別の教室でそれぞれの障害の特性に応じた授業を受けることができる制度です。
制度が始まったのは1993年度で、対象となるのは言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者などです。全国の小中学校に加え、2018年度からは一部の高校でも導入されました。
通級指導を受ける小中学生は年々増えており、公立小中学校では2017年度に約11万人になりました。これは、2009年度に2倍です。そのうち9万人以上が小学生であり、小学校における通級指導が大幅に増えていることが分かります。
これには、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などの発達障害に対する認知度が高まり、その特性に応じた指導を希望する保護者が増えているという背景があります。
教員不足
しかし、保護者が希望しても、通級指導教室を設置していない小中学校が多いのが現状です。設置している他校や特別支援学校へ通級する方法もありますが、現在設置している学校でも教員の数が不足していて、申し込んでも指導を断られるケースが多いといいます。
通級指導を希望する保護者らは教員の大幅増を国に求める活動を行っていますが、解決の目処は立っていません。定年による教員の大量退職や若手志望者減など、今後、ますます教員不足が深刻化していく中、必要な人材をどう確保していくのか、大きな課題です。
発達障害に理解ある教員を
もう一つの課題は、現在、発達障害に対する詳しい知識がない教員がまだ多いということです。例えば、注意欠陥多動性障害(ADHD)の子が授業に集中できず、立って歩きまわったり、物音に敏感な子がびっくりしてパニックを起こしたりすることがありますが、そういうとき、知識や経験がない教員はなかなか適切な対応ができません。
現在の通級指導には専門の免許が必要ないため、障害への知識や経験がない教員が担当することも珍しくありません。長年、学校では障害に対する知識がある、専門性の高い教員の不足が問題になっていました。
そこで、2019年1月、文部科学省は子供の障害に応じた指導ができる教員を増やすために、専門性の高い研修制度を創設して履修証明を発行することにしました。同時に、指導方法の指針を作って学校に周知します。
今後、子供の障害の特性を正しく理解し、その子の困難に寄り添った指導ができる教員が増えていくことが望まれます。
※熊本日日新聞2019年1月24日「発達障害児指導 充実へ」
・特別支援学級及び通級指導に関する規定:文部科学省
・通級指導を受けている子どもが9万人を突破|ベネッセ教育情報サイト