子供の歯並びが悪いと、歯の矯正を考えるご家庭も多いでしょう。しかし近年、「歯の矯正」が不適切に行われ、トラブルになるケースが多く報告されています。
一体治療の現場でどんなことが起きているのか、良い診療所を見つけるためにはどんなところに気をつければ良いのかまとめました。
「歯の矯正」トラブルが多発
日本臨床矯正歯科医会によると、近年、不適切な歯の矯正治療を受けた例が多く報告されています。その多くが治療費や治療期間よりも「治療内容」を不適切としています。具体的なトラブルの内容は以下の通りです。
- 説明もなく高額な矯正装置を付けられた
- 無理な治療や全く効果のない治療、不必要な治療がなされた
- 取り外しのできる簡単な装置だけですべての治療ができると言われた
- どんな場合でも歯を抜かず治療できると言われた
- 診断のために当然すべき「頭部エックス線規格写真」検査をしていない
- 「拡大床」を不適切に使ったため健康被害を起こした
このようなトラブルが起きる背景には、矯正歯科の専門的な教育や研修を受けていない歯科医師でも「矯正歯科」の看板を掲げることができるという制度的な問題があります。
「拡大床」トラブル
歯並びを整える矯正歯科の治療に「拡大床」という装置があります。拡大床は口の中にはめ、ねじの力などで歯を裏側から押し、歯を傾けながら移動させる効果があります。
「子どもの歯列を、歯を抜かずに矯正するには、小さいうちに拡大床を使うといい」と勧める医師が多いそうですが、実際は適応対象となる症状は限られているそうです。
近年、誤った情報とともに「拡大床」が使用されるケースが目立ち、「治療前よりも噛み合せが悪くなった」「歯茎と、歯の根を支える歯槽骨がダメージを受けた」「咀嚼や発語などの口の機能が落ちてしまった」などの健康被害が報告されています。
良い診療所の見分け方
では、適切な治療を受けるにはどうすれば良いのでしょうか。
日本臨床矯正歯科医会は、日本矯正歯科学会の認定医(約3100人)を受診することを勧めています。名簿は同学会のウェブサイトに掲載されています。家から近い専門医を探してみましょう。
しかし、近所に専門医がいない場合もあります。日本矯正歯科医会は、信頼できる矯正歯科を見極めるための受診時の目安を公表しています。以下の通りです。
- 頭部エックス線規格写真(セファロ)検査をしている
- 精密検査をし、分析・診断した上で治療している
- 治療計画、費用について詳細に説明している
- 治療中の転院とその際の治療費精算まで説明している
- 常勤の矯正歯科医がいる
- 専門知識のある歯科衛生士やスタッフがいる
歯の矯正は虫歯と違って緊急性がありません。効果やリスクについて主治医とよく話し合い、別の専門医にセカンドオピニオンを求めるなど、慎重に時間をかけて判断しましょう。かかりつけの一般歯科で認定医を紹介してもらったり、矯正歯科専門の開業医や大学病院の矯正歯科に相談するなど、納得するまで説明を聞くことが大切です。