気を付けていたつもりなのに、子供の歯が虫歯になってしまった。お母さんにとってはショックなことでしょう。特に乳歯は虫歯になりやすく、子供の1歳半健診で初めて虫歯が発見されることも珍しくありません。
1〜2歳の低年齢児が歯科へ行くと、「サホライド」という薬剤を歯科医に勧められることがあります。サホライドとは、どんな薬でしょうか?
サホライドとは?
今から40年ほど前、1970年代にはほとんどの子供に虫歯がありました。その頃に子供の虫歯の進行抑制のために登場した薬がサホライドです。フッ化ジアミン銀という薬で、乳歯の初期虫歯に塗布することで虫歯の進行を遅らせる効果があります。
こう言うと良いことばかりのようですが、問題は塗ると虫歯の部分が真っ黒になってしまうことです。また、進行してしまった虫歯には使えません。
昔から歯科でよく使われてきたロングセラーの薬品ですが、最近は「見た目が悪い」という理由でサホライドを避ける保護者が増える傾向にあります。また、昔に比べて子供の虫歯が減ってきたので、余計目立ってしまうのかもしれません。
しかし、進行が速い乳歯の虫歯を食い止める効果はかなりあります。
長所と短所
1〜2歳のお子さんの乳歯を治療することは可能ですが、様々なリスクが伴うことを保護者は知っておく必要があります。
例えば前歯は一般的に6〜7歳頃永久歯に生え変わります。生え変わりまでまだ時間が長く、神経が大きい乳歯は、治療に痛みを伴うことがあり、治療して白い詰め物をしても取れやすい欠点があります。再び削って詰めることは可能ですが、それを繰り返していると歯の神経に触り、歯の神経が死んでしまうことがあります。
神経が死んだ歯は他の歯に比べて早く抜ける傾向があり、生え変わりの時期にずれが生じることになります。そうすると今度は、永久歯の歯並びにも悪影響を与えかねません。
一方、初期虫歯にサホライドで急ブレーキをかけることができれば、削るわけではありませんので痛くありません。幼児期の歯医者体験がトラウマになって歯医者嫌いになることもありません。
ただ、サホライドはどうしても虫歯の部分が黒く目立ってしまいますので、生え変わるまでの辛抱だとはいっても、やはり気になってしまう方が多いでしょう。また、サホライドを塗っても虫歯の進行が100%止まるわけではありませんから、その後も定期的に歯科に通って経過観察が必要になります。
子供にとって良い選択を
乳歯が虫歯になってしまった場合、保護者は一つの選択に迫られます。
ほんの初期の虫歯なら、定期的なフッ素塗布と歯磨き、そしてフロスを歯と歯の間に通すケアを続けて、日常の食生活を見直すことで虫歯の進行を食い止めることも可能かもしれません。しかしこの場合、ちょっと油断すると虫歯が急速に進行してしまうことも念頭に置いておきましょう。
その他の選択は、リスクを考慮した上で歯を削って治療するか、サホライドを塗って経過観察するかです。歯医者を怖がるので、取りあえずサホライドで虫歯の進行止めをして、数ヵ月〜1年後、お子さんが歯科に慣れてきた頃に改めて治療するという方法もあります。
子供にとって良い選択とは何か、考えて慎重に選びましょう。大切なことは、乳歯の虫歯を退治すること、そして次に生えてくる永久歯を守ること、乳歯の歯並びの状態が次に生えてくる永久歯の歯並びにとって良い状態であることです。
幼いうちから定期的に歯科検診を受け、歯医者に慣れておくのは良いことです。歯科で適切な歯磨きの方法を学び、予防用のフッ素も塗ってもらって、おやつの食べ方などを改善していきましょう。