イソップ、アンデルセン、グリム童話をはじめ、世界には名作と呼ばれる絵本がたくさんあります。その中から、是非子供たちに読んでほしい10冊を選びました。どれも傑作ばかりです。小さいお子さんには読み聞かせを、小学生以上なら自分で読んでみるのもいいですね。
おおきな木(シェル・シルヴァスタイン 作、ほんだ きんいちろう 訳)
読むことで、これほどいろいろな疑問がわき、賛同したり否定したり、考えさせられる絵本は珍しいです。子供の頃読んで理解できなくても、強い印象を残す絵本です。大人になって人生の節目節目に読み返すことで、またこの絵本に対する見方も変わり、違う読み方ができるようになるかもしれません。
絵はシンプルなのに、驚くほど巧みな構図です。映画を見ているように時間の経過を感じさせる力量は素晴らしいものがあります。
村上春樹さんの訳もあります。興味がある方は、読み比べてみると面白いでしょう。
しずくのぼうけん(マリア・テルルコフスカ 作、ボフダン・ブテンコ 絵)
初版は1969年。それから45年以上も多くの読者に愛されているロングセラー本です。
しずくの冒険をたどることで、水の性質や循環の在り方を楽しく学べる優れた絵本です。お子さんが初めて科学に触れるきっかけとなる絵本かもしれません。
「しずく」のキャラクターが愛らしいです。どんどん新しい展開が繰り広げられるので、読んでいるとドキドキワクワクします。
読み聞かせは4歳くらいから、自分で読むなら小学生からが対象年齢です。
おおかみと7ひきのこやぎ(グリム童話 チャイルド絵本館 西本鶏介 文、アンティエ・エ・グメルス 絵)
子供の頃に多くの方が家や幼稚園・保育園で読んでもらったことがあるでしょう。
一生懸命お母さんヤギの言いつけを守りながら、それでもオオカミの悪知恵に負けて食べられてしまう子ヤギ達。世の中の厳しさを教える幼児向けの教訓話です。恐ろしい話だからこそ、子供たちはこの話を聞いて「気を付けよう。もっと用心しよう」と思えるんですね。
恐ろしさの中にもユーモアがあり、母親の愛情もたっぷり感じられる童話です。
ちいさいおうち(バージニア・リー・バートン 作)
1965年に出版されて50年、多くの読者に愛され続けるロングセラー本です。
「ちいさいおうち」が主人公のため、その「おうち」が建っている風景が描かれ続けるのですが、これほど動きと変化を感じる絵本も珍しいです。季節の移り変わりに加え、田舎の風景がどんどん町に飲み込まれていく様子が描かれます。
田舎の絵の美しさと配色が素晴らしく、それだけに茶色や灰色一色の街並みが異様に映ります。環境問題、都会と田舎の生活の違いについて考えさせられる絵本です。
長ぐつをはいたねこ(シャルル・ペロー 原作、ハンス・フィッシャー 文・絵、やがわ すみこ 訳)
ヨーロッパに伝わる民話で、1697年にシャルル・ペローがこの童話を発表しました。長く伝承されてきたお話のため、様々なバージョンがあるようです。
ずるがしこい猫の策略の数々と、びっくりするような話の展開が魅力で、長く子供たちに愛されている昔話です。
日本でも多くの出版社から全く雰囲気の異なる絵本がたくさん出版されているので、読み比べてみると面白いでしょう。ブロンズ新社出版(石津ちひろ 抄訳、田中清代 絵)の絵本もおすすめです。
ピーターラビットの絵本(ビアトリクス・ポター 作、いしいももこ 訳)
ピーターラビットの名前とキャラクターは有名ですが、全24巻あるこのシリーズの内容をよく知っている方はそれほど多くないかもしれません。
100年以上前に描かれた名作で、のどかな田園風景の中、可愛らしい動物たちの姿が生き生きと描かれています。
内容は4歳〜小学生くらいでしょうか。シーリーズの中でも内容が優しい本と、少し込み入った内容の本が混ざっています。
愛らしいキャラクターがたくさん出てくるところも魅力のひとつです。
三びきのひぎのがらがらどん(北欧民話 マーシャ・ブラウン 絵、せた ていじ 訳)
マーシャ・ブラインの荒々しくユーモアのある絵が、物語の魅力を存分に引き出しています。
物語に登場するトロル(北欧に伝承される妖精の一種)が何とも恐ろしい姿で、子供たちの注目を集めて離しません。ドキドキハラハラする物語の展開と、トロルとやぎ達の知恵比べが面白く、子供たちに長く愛されている絵本です。
でも、トロルがあんまり不気味で恐ろしい姿なので、怖がりのお子さんにはおすすめしません。
てぶくろ(エウゲーニー・M・ラチョフ 絵、うちだりさこ 訳)
ロシアの有名な民話絵本です。
それぞれ服装も性格も個性的な動物たちが次々と登場し、おじいさんが落としていった手袋に入って一緒に住もうとします。発想が豊かで、話の展開が楽しく自由なところがこの絵本の魅力です。話を読んでいくと、この先はどうなるのかな?これ以上大きな動物がやってきたらどうやって入るの?といろいろ考えて子供たちは面白がってくれます。
寒い冬に読んであげたい名作です。
おおきなかぶ(ロシア民話 A.トルストイ 再話、内田莉莎子 訳、佐藤忠良 画)
簡明な内容と繰り返しのリズムが楽しく、幼稚園の年少向けの読み聞かせにもよく選ばれる名作絵本です。
なんといっても、この「うんとこしょ どっこいしょ」という掛け声が楽しい!小さな子供たちでも思わず覚えて、大きな声で一緒に言ったりできるところがこの絵本の醍醐味です。
佐藤忠良さんが描く登場人物の表情、仕草、服装なども細やかで素晴らしいです。
かいじゅうたちのいるところ(モーリス・センダック 作、じんぐう てるお 訳)
コルデコット賞を受賞し、世界中で愛されているセンダックの代表作です。
子供の想像力がいかに生き生きと羽ばたくか、魅力あふれるタッチで描いています。
絵本の配色が素晴らしいです。登場する「かいじゅうたち」が不気味で恐ろしく、それでいてユーモアあふれる姿が印象に残ります。黄色い目玉がぎょろぎょろしているので、小さいお子さんはちょっと怖がってしまうかもしれません。
読み聞かせに取り入れてほしい1冊です。
編集後記
いかがでしたか?
子供たちへの教訓を含んだ絵本、話の展開にハラハラドキドキする絵本、繰り返しのリズムが心地よく楽しい絵本、いろんな絵本を選んでみました。
子供たちが絵本を通して想像力を羽ばたかせたり、新しい世界に興味を持ってくれたら嬉しいです。
是非、たくさんの絵本を手に取って、お気に入りの1冊を見つけて下さい。