ユーモア溢れる人情味深い絵が印象的な長谷川義史さん。懐かしいような、温かい気持ちになる絵本がたくさんあります。
今回は、長谷川義史さんの絵本の中からおすすめの絵本をご紹介します。
おかあちゃんがつくったる
おかあちゃんがつくったる(長谷川義史 作、講談社、2012年)
長谷川義史作『てんごくのおとうちゃん』の続編です。
父親がいない息子に寂しい思いをさせたくないと奮闘する「おかあちゃん」の姿が描かれています。その姿は力強くて愛情にあふれていて、思わず「あっぱれ!」と言いたくなるほどです。「おかあちゃん」の愛情たっぷりの言動が、どこか息子の希望とずれてしまっているところも笑えます。きっとこの絵本に登場する息子も、大人になったら思い返して笑い話にしてくれそう。母親の愛は偉大です。
おへそのあな
お腹の中の赤ちゃんが、おへその穴から外の世界を見ているというお話。そこには赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしている両親や兄姉、祖父母の姿が……。
命の尊さ、素晴らしさを長谷川義史が柔らかいタッチで描きます。こんな環境に生まれてくる赤ちゃんはとても幸せだなあと思います。
感動的で、読むと優しい気持ちになる絵本です。これから赤ちゃんが生まれるご家庭におすすめです。
おじいちゃんのごくらくごくらく
おじいちゃんのごくらくごくらく(西本鶏介 作、長谷川義史 絵、すずき出版、2006年)
「ゆうた」は「おじいちゃん」が大好きです。いつでも、何をするときもおじいちゃんと一緒です。そんな大好きなおじいちゃんが亡くなるときが来て……。
人は、いつか必ず死を迎えます。死別は悲しいですが、「ゆうた」にとって「おじいちゃん」と過ごした時間は宝物です。愛情たっぷりの幸せな記憶が「ゆうた」の心を支えてくれます。
悲しいけれど、温かい気持ちになれる絵本です。
てんごくのおとうちゃん
てんごくのおとうちゃん(長谷川義史 作、講談社、2008年)
「はいけい、てんごくのおとうちゃん、げんきにしていますか」。
小学校3年生の男の子が、天国の父親に手紙を綴っています。文章は淡々としていて、それだけに強い悲しみが伝わってくる絵本です。けれど、父親との「少ないけど、大切な思い出」が語られることで、読後には温かい癒しが感じられます。長谷川義史さんの温かい絵と、どこか懐かしい街並みが印象的です。幼くして父親と死に別れた子供の心情が細やかに描かれています。
いいからいいから
『いいからいいから』シリーズの1作目です。
「いいからいいから」が口癖のおおらかなおじいちゃんが登場し、相手が恐縮するほどの優しさをふりまきます。一緒にいる孫にもしっかりおじいちゃんの言動が受け継がれているのが面白いです。
この絵本を読むと、細かいことを気にしてくよくよするのが馬鹿らしくなってしまいます。おおらかな優しさに包まれて、思わず笑顔になってしまう絵本です。
じゃがいもポテトくん
北の国からやってきたじゃがいも家族、八百屋さんで売られてその後の運命は……?
読むと思わず笑ってしまう楽しいお話です。オチが素晴らしいので楽しくなります。
じゃがいも料理が食べたくなる絵本です。
八百屋さんの隣りの魚屋さんで繰り広げられているタコの動きにも注目して読むと2度楽しいです。
まわるおすし
「今日はお父さんの給料日。月に一度の回るお寿司の日」。この書き出しから、子供たちがどんなにこの日を楽しみにしているかが分かります。とてもコミカルで笑えるお話ですが、本人たちは大真面目にやっています。庶民的な家庭では、これと似た状況はよくあるのではないでしょうか。
コミカルですが、家族の結束、信頼感などが熱く描かれていて、共感を呼ぶ絵本です。
パンやのろくちゃん げんきだね
パンやのろくちゃん げんきだね(長谷川義史 作、小学館、2014年)
「パンやのろくちゃん」シリーズの1冊です。
「ろくちゃん」がお父さんと自転車の特訓をしていると、商店街のみんな次々に集まってきてアドバイスをしてくれます。商店街のみんなの人柄の良さ、優しさ、温かさに包まれてすくすくと育つ「ろくちゃん」。近年は地域の人々の交流が少なく、孤立した子育てに悩む人も多いだけに、「ろくちゃん」が生活する環境は素敵だなと思います。
心が温まる絵本です。
ぼくがラーメンたべてるとき
ぼくがラーメンたべてるとき(長谷川義史 作、教育画劇、2007年)
日本絵本賞と第57回小学館児童出版文化賞受賞作品です。
最初は楽しい絵本かと思って手に取ったのですが、読み進めているうちに重いテーマに気付かされます。普段は日本人の多くが意識せずに暮らしている国による生活の違い、格差、戦争や平和について考えさせられる絵本です。読んでドキリとしたり、ショックを受ける方もいるかもしれませんが、目を背けず、知っておくべきことだと思います。
小さいお子さんには難しいテーマなので、理解できる年齢になってから読んであげて下さい。
いろはにほへと
いろはにほへと(今江祥智 文、長谷川義史 絵、BL出版、2004年)
人を変え、場面を変えながら、同じことが繰り返されるテンポの良さが物語を楽しくしています。最初は小さな出来事が次々と連なって、最後には思いがけない大きな成功に繋がるところが見物です。
気持ちの持ちようで問題が好転するところなど、私たちの生活でも起きることですね。
意外性のある楽しいお話です。
編集後記
コミカルで笑える話も多いのですが、中には家族と死に別れた悲しみや、その悲しみの中でもまっすぐ前を向いて生きようとする力強さ、愛情の深さが描かれている絵本もあって、胸が熱くなります。
忘れてはいけない大切なことや、人の優しさに気付かせてくれる素敵な絵本の数々です。