6歳くらいになると子供の歯が生え変わり始めることは多くの方が知っていることでしょう。
しかし、実はこの歯の生え変わりの時期は、虫歯予防の視点からとても重要な時期なのです。
保護者が知っておくべき大切なことをまとめました。
子供の歯はどのように生え変わっていくのか
4〜5歳の頃、子供の頭のレントゲン写真を撮ると、歯が二重に写って見えます。これは、乳歯の下に育ちつつある永久歯が写っているのです。
6歳前後になると、まず乳歯の一番奥の歯に隣接して6才臼歯(第1大臼歯)が生えてきます。これが一番初めに生えてくる永久歯で、後から生えてくる永久歯の基準となる歯です。この6才臼歯の生え方が悪いと、歯列が乱れる原因になりますので、保護者は注意して見ておきましょう。
その後、前歯が抜けて生え変わり、10歳頃には前歯と6才臼歯の間の歯が3本ずつ、上下左右すべて生え変わります。そうなると全部大人の歯です。ただ、生え変わっても歯の根はまだ短く、伸びている途中です。歯の根がしっかり伸びて顎の骨にくっつくには、歯が生えてから3〜4年かかります。
そして、12歳頃になると、6才臼歯の奥に第2大臼歯が生えます。10代後半になると、更にその奥に第3大臼歯(親知らず)が生えます。しかし、第3大臼歯(親知らず)は全く生えてこない人も4人に1人の割合でいるそうです。人間が食物を調理して食べるようになってから歯の退化が進み、顎が小さくなってきているのが原因だと考えられています。
乳歯の数は20本。永久歯の数は第3大臼歯(親知らず)も含めると全部で32本です。乳歯が生えていなかった場所に生える残りの12本は、すべて奥歯です。子供が成長して顎の骨が大きくなると、少しずつ奥に生えてきます。手足の骨や顎の骨は成長して大きくなりますが、一度生えた乳歯は全く大きくなりません。乳歯が抜けるのは、大きく成長した顎の骨に合う大人の歯と入れ替わるためです。
歯を丈夫にするためには?
すでに成熟してしまった歯の歯質を強くすることはできませんが、これから生えてくる歯や、生えたばかりの歯は、毎日の食事によって丈夫な歯質にすることができます。丈夫な歯を作るためにはバランスの良い食事を摂ることが大切です。お菓子やインスタント食品ばかり食べていると丈夫な歯を作るための栄養が不足してしまいます。
また、砂糖は虫歯を作る元凶であるだけでなく、骨や歯を作るのに欠かせないカルシウムを消費してしまうと言われています。砂糖の入ったお菓子類をたくさん食べすぎないよう、歯の生え変わりの時期は特に注意しましょう。中でも保護者が知っておくべきことは、生えたばかりの歯はまだ未完成で、虫歯菌に弱いということです。歯の表面のエナメル質もまだ結晶が小さく、隙間がたくさんあります。そのため虫歯菌が作り出す酸に弱く、すぐ虫歯の穴が開いてしまいます。
しかし、逆に言えばフッ素などの薬品も歯の表面につきやすいということなので、虫歯になりやすいお子さんには、新しく生えた歯にフッ素を塗ってあげましょう。生えたての永久歯を虫歯菌の酸から守るために、「だらだら食い」は絶対にやめさせましょう。食べる度に歯についた歯垢の酸は強くなり、虫歯ができやすくなります。食べやめると唾液の作用で酸が弱くなることが分かっているので、食事は決められた時間に取ることが大切です。
親子で歯磨きの練習をしよう
歯磨きで口の中の食べかすを綺麗に取り除けば、虫歯にはなりません。しかし、実際は歯ブラシだけで口の中を綺麗に磨くのは、大人でも難しいことです。
子供が歯磨きの仕方をしっかり覚えるために、親が実践して見せて、練習する機会を作りましょう。きちんと磨けているかチェックするために、歯垢を赤く染める商品などを利用してみると、磨き残しが分かりやすいです。虫歯になりやすいのは6才臼歯、歯と歯の間、歯の付け根の部分です。意識して磨かせましょう。
特に生え始めの6才臼歯は歯ブラシが届きにくく、磨くのが難しい歯です。ブラシの小さなデンタルタフトを使ったり、普通の歯ブラシの毛をカッターなどで切って6才臼歯専用の歯ブラシを作ると良いでしょう。
歯と歯の間にはデンタルフロスを使うなどして、日々口の中を衛生的に保つよう心がけましょう。
【参考文献】
※『むしばくんにはまけないよ!!』今西孝博 文、藤本四郎 絵、偕成社、1982年