人は左右の目を両方を使って焦点を合わせ、物を見ています。ところが斜視があると、十分な両眼視機能が獲得できないまま成長してしまいます。

乳幼児期に斜視を発見できれば、両眼視の訓練を始めることが可能です。今回は、その訓練の一例をご紹介します。

間歇性外斜視のAさん(4才)の例

まず、斜視を専門とする眼科でしっかりした診断を受け、斜視治療用メガネ(プリズムレンズ)を作りました。Aさんはこのメガネをかけても外斜視が現れたため、更に強く矯正する「フレネル膜プリズムレンズ」を追加しました。Aさんの場合、右目が時々外斜視になるので、「フレネル膜プリズムレンズ」を左目のメガネレンズに貼りました。こうすることで、弱い右目を補うことが可能です。

その後、定期的に通院しながら外斜視の程度を確認していきました。外斜視が現れているときは物が二重に見えるのが正常ですが、物がひとつしか見えない時があり、その時は斜視の目(右目)を使っていないということが分かりました。

その他、3Dメガネをかけて物が立体的にきちんと見えるか、右目と左目で別々の映像を見せてきちんと両眼を使っているか、視線がずれていないかなど確認しました。
検査の結果、Aさんの場合、外斜視が現れるとき物が二重に見えたり、右目を使わず左目だけで物を見ていることが分かりました。左目だけで物を見る習慣がつくと使っていない右目が弱視になる恐れがあり、右目を使う訓練が必要と診断されました。

両眼視訓練の例

Aさんは5才になったのを機に週一で病院に通い、両眼をしっかり使って物を見る訓練を開始しました。訓練は、視能訓練士の指導のもとに行います。

はじめは暗くした部屋で5m先のライトの光を裸眼で見ます。片方の目を赤いフィルムで隠し、左右の目を交互に隠して光を見ることで、赤い光と白い光を別々に認識させます。そしてその2つの光を交互に数秒ずつ見る訓練をします。右目の動きが鈍いので、交互に見るのはなかなか大変です。

慣れてきたら赤いフィルムを通さず、2つ白いの光を認識させて交互に見る練習をします。これができるようになったら、部屋を明るくしたり、見る対象物を5mから20m先にするなどして難易度を上げます。ここまでで2ヵ月要しました。訓練期間中は、治療用メガネを外すと物が二重に見えていたようです。しっかり右目も使うようになった証拠です。

その後、二重に見える状態から意識して焦点を合わせる訓練に移行しました。Aさんはなかなかコツがつかめず苦労していましたが、近くを見たり、瞬きしたり、目に力を入れてみたり、いろいろやっているうちに焦点を合わせるコツがつかめてきました。
その結果、3ヵ月の訓練を経て強い矯正が不要になり、「フレネル膜プリズムレンズ」をメガネから外せることになりました。

訓練終了後の経過観察

Aさんは弱視もなく、斜視を治して両眼視ができるようになりました。人によっては斜視を治すと近視になってしまう場合がありますが、それも問題ありませんでした。
寝起きや体調が悪いときなど、外斜視が一時的に現れて物が二重に見えることがありますが、その場合は保護者が注意喚起して焦点を合わせるように促します。

念のため、あと1年ほど治療用メガネをかけたまま生活し、月に1回通院して経過観察することになりました。5才のAさんがもう少し成長して自分の目について理解できるようになったら、メガネを外しても無理なく目の焦点を合せられているか確認して、治療用メガネも外すことができそうです。

訓練のポイント

訓練には保護者の協力が必要です。週一で通院し、病院で訓練したことを自宅でも毎日練習する必要があるため、本人のやる気と根気が重要になります。訓練を始める年齢やその子の性格によって、どのくらい頑張れるか変わってきます。もちろん、担当の先生との相性も大切です。

訓練には言葉の理解も必要なので、あまり幼すぎると練習内容の理解が難しい面があります。一度チャレンジしてみてうまくいかなかった場合、また半年後に再チャレンジしてみましょう。

※今回紹介したのはあくまで一例です。訓練内容は個人の症状や病院の方針によって変わります。きちんと診断を受けて、それぞれの症状に合った治療・訓練を受けて下さい。
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