年齢を重ねるとさまざまな病気のリスクが高くなります。
高血圧や脳梗塞、心筋梗塞などの循環器系の病気、糖尿病などの内分泌系の病気から五十肩などの関節の病気など、生活習慣とともに老化が原因になる病気はたくさんあります。
シニアを悩ます病気はそれぞれ深刻ではありますが、その中でも特にシニアが恐れる病気の一つが認知症です。
認知症は、誰でもがかかる可能性のある病気です。少しでも、認知症のリスクを排除しながら暮らしたいものです。
認知症の初期症状は物忘れや思い違いなどでつじつまが合わないような行動や言動をしてしまうことです。
物事を忘れてしまったり、思い違いで間違ったことをしてしまうことに自分自身が非常に戸惑ったり、時には周囲の人に指摘されたり叱られたりするようなこともあります。こんな時、本人は認知症ではないかと自覚して悩みます。これが原因でうつ状態になることもあります。
認知症ではないかと自覚して医師の診断を受ける人は正解です。
認知症を自覚して、人に隠そうとしたり、取り繕おうとすると事態は悪化してしまいます。というのも、物忘れや勘違いは認知症だけの症状ではないからです。
他にも、よく似た症状が出る病気があり、早期治療をしないと命に係わることもあります。また、認知症と思い込んで悩んでいる間に、本当の認知症に進行してしまうことも少なくありません。
認知症と似た病気
うつ病
シニアの病気で認知症とよく間違えられるのがうつ病です。うつ病にかかると無気力になり、物事に対する反応が鈍くなります。トンチンカンな受け答えをして会話が成り立たないこともあります。
うつ病は単独で発症することもあれば認知症の合併症として発症することもあります。うつ病にかかると無気力になり考えたり行動したりすることが激減するので脳の活動低下も甚だしくなります。最初は単なるうつ病でも次第に本格的な認知症に移行してしまうのです。
うっとうしくて何にもする気がしない日が何日も続く場合には心療内科や精神科の医師の診断を受けましょう。うつ病は早期に治療すれば、大きく改善する病気です。
慢性硬膜下血腫
軽く頭を打ってから何か月か経って脳の硬膜とクモ膜の間にゆっくりと出血し血腫となる病気です。
血腫が脳内を圧迫して、頭痛や嘔吐などの症状がでますが、同時に言語障害や無気力、意識障害などが起き、認知症と間違えられることが多い病気です。放置すると、昏睡状態となり死に至ることもあります。
ほとんどの場合、症状に応じた手術が行われ2週間程度の入院で済みます。まれに後遺障害が残ることもあります。酒量が多い人は脳が委縮している可能性もあり、酔って転倒しても忘れてしまったりして発見が遅れる場合が多いので十分注意が必要です。
特発性正常圧水頭症
脳の髄液が何らかの事情で溜まりすぎてしまう病気です。症状は、歩行困難、失禁、物忘れなど、重い認知症の症状がでます。シャント手術で、運動系の症状は比較的早く軽減し、物忘れなどの症状は若干回復が遅れます。適切な治療で完治や大幅な改善が期待できる病気です。
一過性全健忘(TGA)
シニアに多い脳の病気です。
突然、記憶をなくし、いま何をしようとしていたのか?なぜここにいるのか?などがわからなくなります。頭を打ったり、てんかんの症状もなく単にその場の記憶が消えるだけの症状です。軽い卒中や血栓が原因になることがあります。普通は24時間以内に回復し、特に治療はしません。卒中や血栓が原因の時には、その治療をします。
せん妄
ショックな出来事で強いストレスがかったり、栄養障害、脱水症状、酸素不足などが原因でせん妄という症状が現れることがあります。引っ越しや入院など生活環境が大きく変化した時にも起きることがあります。物忘れや意識障害などが起きるので認知症と間違われやすいのです。
せん妄はすでに認知症にかかっている人の場合、さらに認知レベルが下がってしまうこともありますが、認知症ではないけれども認知症のような症状が現れる場合もあります。心療内科や精神科の指導をうけながら対処しましょう。
最後に
- 最近物忘れがひどく増えた
- 何事にもやる気がでない
- 今まで楽しかったことが楽しくない
- 尿失禁があった
などの症状があれば、脳神経外科や精神科、心療内科などを受診しましょう。
物忘れの原因は認知症だけではなく、他の病気の可能性があります。これらの病気は、手術や投薬で治る可能性が高い反面、放置すれば命に係わる場合もすくなくありません。