シニアのお定まりの不調のなかに膝痛、腰痛があります。これらの不調の要因によく言われるのは肥満です。
特に膝痛に関しては、体重を軽減することで改善する人が非常に多いといわれています。そのほかにも、軟骨の減少、関節の変形など多くが老化からくるものです。
ところが、もう一つ無視できない原因があります。それが外反母趾です。外反母趾とは、足の親指が小指側に曲がって親指の付け根の関節が大きく膨れ上がる症状です。
外反母趾というとハイヒール、先の細い靴を連想します。確かにこれらは外反母趾を悪化させる要因ではあります。しかし、根本的な原因は他にあります。いわゆる偏平足や帳開足といわれる足の変形が外反母趾の根本原因です。
扁平足
偏平足というのは、土踏まずがきちんと凹んでいない足をいいます。土踏まずの凹みがなく歩くときには足の裏全体がペタンペタンと着地します。足の裏全体に重心がかかって足指は浮いた状態のままになります。
偏平足の原因は、先天的なものと後天的なものがあります。後天的なものは、乳児期早い時期から靴を履いていて、裸足であるく経験が少なかったり運動不足であったりすることです。若いときには偏平足ではなかったのに、加齢にともなって筋力が衰えて偏平足になることもあります。
帳開足
足の指は本来、親指から小指へと緩やかなアーチを描いています。中指をピークとするように丸まっているのです。ところが、足指を使わない歩き方をしていると足指が筋力不足になって五本指のアーチがへしゃげてしまいます。この状態を帳開足といいます。
偏平足が縦のベタ足なら帳開足は横のベタ足です。偏平足では足指が浮いた歩き方になってしまうので開帳足のリスクが高くなります。
帳開足で足の幅が広がると親指が小指側に曲がって親指の付け根の関節が大きくはれます。これが外反母趾です。
開帳足や偏平足では、足の幅が広がってしまうのでついつい幅の広い靴を選んでしまいますが、これは逆効果です。足幅がきちっと合っていない靴も外反母趾の原因になります。
外反母趾が体に与える影響
足は体のバランスの基礎となる部分です。この部分に痛みを抱えて無理をしながら歩いていたのでは、体のほかの部分に負担がかかってしまいます。片足をかばいながら歩けば、まず膝や腰に負担がかかります。外反母趾は決して足だけの病気ではありません。
歩行時のバランスが悪ければ腰や首でバランスをとります。猫背や前傾姿勢が身についてしまうと、とても老けて見えます。腰痛も首こりも慢性的になれば非常に苦痛で、自律神経失調症やうつ状態になる人もすくなくありません。
外反母趾の予防法
外反母趾は女性に多い病気です。その原因は女性の筋力や関節が弱いこと、加えてハイヒールや先細の靴を履く機会が多いことだといわれています。
外反母趾を根本的に直したい、防止したいと思うならまずは足の筋力を鍛えることです。歩き方を変えること、靴を変えること、足の筋力を鍛えることです。
- 歩く時には、意識してかかとから着地して指先で踏ん張るようにしましょう。
- 裸足で、でこぼこした場所を歩いて足の裏を鍛えましょう。青竹踏みなどをすると気持ちもいいし偏平足の緩和にもなります。
- 靴は、かかとをきちんと合わせてみて、つま先から1㎝弱の余裕のある大きさの靴を選びましょう。
シニアの中には、幅の広い靴が楽な靴だと思い込んで必要以上に幅の広い靴を履いている人がいますが、幅は余裕のないきちっと合うものにします。また、ハイヒールを履くと重心が足の裏の前側に集中してしまい、その上に靴のつま先が細いので親指は小指側へ、小指は親指側へ曲がらざるを得ないのです。外反母趾に気が付いたらかかとは3㎝以下のものにしましょう。
外反母趾に気づいたら?
外反母趾は、最初は痛みがないので気が付かないままに静かに進行していきます。目立つ頃には痛みもでるようになります。外反母趾の痛みは靴を履いた時の圧迫や摩擦でおきますが、ひどくなると何もしなくても痛むようになります。
もし、外反母趾がはじまっていると気が付いたときには、痛みがなくても放置せず何らかの手当てをしましょう。
(1)外反母趾用サポーターを着用して進行をおさえる。
外反母趾用サポーターは、曲がった足指を元に戻すように柔らかく抑えたり足指のアーチを作るようにサポートします。
(2)外反母趾用のインソールを利用する。
足指の部分をアーチ形に膨らませることによってアーチを強制的に作ってくれます。外反母趾では、痛みを防止するために幅広の靴を選んでしまいますが、靴の幅はきっちりと合わせて、インソールで足指のアーチをつくることで足の幅を適正に狭めるようにします。
(3)テーピングをすることで歩行を安定させる。
テーピングは医師などの専門家の指導を受けて行います。
※ 外反母趾用のサポーターやインソール、テーピングなどは痛みをとりながら外反母趾の進行をおさえます。
(4)足指のエクササイズをして外反母趾を矯正する。
足指でビー玉をつかんだり、足の下に敷いたタオルを指でたぐりよせたりすると足指の筋肉が強くなります。本来足指は第二関節で曲がり、足指でものをつかむことができます。足指のエクササイズは、外反母趾の予防や矯正に役立つばかりではなく、つま先の血行を改善するので冷えの解消にもつながります。
(5)症状がひどくなり痛みも激しい場合には整形外科で手術をする。
突出した骨を削り、曲がった親指を元へもどす手術があります。どの分を切除するかは、外反母趾の形状ごとに違います。しかし、手術をしても、歩き方や靴の選び方を変えなければ再び外反母趾になる可能性があります。かならず、靴、エクササイズ、歩き方の矯正をおこないましょう。
最後に
年齢を重ねてくると、膝痛や腰痛のリスクは限りなく増えていきます。外反母趾を治せばそのリスクを一つ取り除くことができます。