片付けというのは高度な脳の実行機能が必要であり、それだけではなく、意欲や集中力も影響してきます。
脳そのものに何らかの障害や影響があると、それだけで片付けというのはできなくなってしまうものです。
認知症については社会的に理解が広がってきていますが、その理解を支援に活かしていくというのは、なかなか難しいものがあります。
認知症は、一度成熟した脳の機能が衰退していく症状のことを意味し、それによって日常生活に支障が出てきてしまいます。
人の脳は、健康的な脳であっても、ボケや物忘れなど脳力の減少が徐々に現れ始めます。認知症はこれがより進行したものと考えることができます。
認知症にも、症状や障害部位などによって種類分けがされるようになり、その症状や行動障害に対してピンポイントでの支援が考えられるようになってきました。
脳の血管障害などによって引き起こされる脳血管性認知症、レビー小体型認知症、有名なアルツハイマー型認知症などです。
それぞれ目立つ症状が違い、時には、別の病気のように見えてしまうこともあります。
認知症はその進行を遅らせたり、抑えることもできると言われるようになり、脳のトレーニングなども医療現場で積極的に取り入れられる機会も増えてきました。
なぜ認知症になると片付けることができないのか
認知症の主な症状として
- 記憶面の障害
- 失語や失行、失認などの行動の障害
- 実行機能障害
- 精神症状、情緒不安定さ
などがあります。
これらは、片づけをしていく作業や行動の妨げになってしまいます。
中でも、実行機能障害と記憶というのは、片づけをする際に大きな壁となります。
実行機能障害は、計画的に何かをすることができなくなってしまうことであり、片づけをしているつもりが、どんどん散らかってしまう原因にもなるからです。
記憶というのもまた、片づけでは必須であり、記憶の能力が落ちてしまえば、どこに何をしまったのかがわからなくなってしまいます。
認知症の人に対して、「片付けて」と指示をしたくなる場合もあると思いますが、認知症の人からすれば、まさに「片づけをしている」つもりということも珍しくありません。
片付けているつもりなのに、「片付けて」と言われてしまえば、認知症の人も頭に来てしまうことでしょう。
あるいは何かを探しているつもりで、いろいろと引き出しているところだったのかもしれません。
ここで情緒が不安定であると判断してしまうと、認知症の人への理解がより間違った方向へと進んでしまうことになります。
このあたりも認知症の理解・支援の難しさであり、「片付け」をしてもらうというのは、実はとても難易度の高い作業になってくるのです。
認知症の片付け支援は、サポート体制が大事
認知症の人への支援は、一人で行なおうとしても無理があります。
片付けの時も、全て一人でサポートしようとすると、イライラし、上記のように「片付けて」と思わず声を大きくしてしまうこともあるでしょう。
複数人と協力し、支援者自身が余裕を持っていくことが、認知症の人への良い支援につながっていきます。
特に片付けは、認知症の人だけにやらせるのではなく、一緒に片付けをしたり、あるいは認知症の人の気が済んだ後にこっそり片づけをするということも必要でしょう。
片付けられない症候群と言われるADHD/ADDって何? | 片付けの秘密TOP | 精神的な疾患は片づけへの意欲を大きく下げる