国立感染症研究所は2016年1月19日、「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」の患者が増加し、4年半ぶりに全国的な流行の兆しを見せていると報告しました。
主に子供がかかりやすい病気ですが、大人がかかると重症化しやすいといわれる病気です。おたふくかぜの症状や予防法についてまとめました。
4年半ぶりの流行
2016年1月4〜10日に全国約3000の小児科から報告された患者数は3771人で、増加傾向にあります。警報レベルにあるのは患者数が多い順に佐賀県、宮崎県、石川県、沖縄県の4県です。しかし西日本だけでなく、山形県や千葉県でも患者が報告されています。
おたふくかぜは近年、4〜5年周期で流行していますが、周期の理由ははっきりわかっていません。流行する年は冬から夏に向けて増加する傾向があり、今年は全国的な流行が懸念されています。
症状と治療法
おたふくかぜはウイルス性の病気で、唾液(患者のせきやくしゃみ)が感染源です。かかりやすいのは4歳から小学校中学年くらいまでと言われます。それ以前の小さい頃にかかると、おたふくかぜに特徴的な症状が出ない「不顕性感染」で終わり、親が気付かない場合も多くあります。
潜伏期間は2〜3週間で、軽度の発熱と耳の痛みで始まり、その後耳の下がはれて痛くなります。高熱が出ることもありますが、約半数は熱が出ません。
おたふくかぜで注意したいのは合併症です。最も多いのは無菌性髄膜炎で、おたふくかぜにかかった子の約10%がかかるといわれます。その他、難聴、脳炎、睾丸炎、卵巣炎、膵炎などの合併症が報告されています。
残念ながら、おたふくかぜに特効薬はありません。小児科を受診し、処方された解熱剤や鎮痛剤を指示通り使いながら、家庭で症状に応じたケアをすることになります。水分補給に気を配り、のど越しの良い食事を与え、耳の下が痛いときは冷たいタオルや「熱さまシート」などで冷やしてあげると良いでしょう。
予防のためにはワクチン接種
おたふくかぜは合併症が怖い病気です。重篤化する可能性を考えると、ワクチンで予防しておくことは大切なことです。よく予防接種の副反応が問題になりますが、おたふくかぜに関しては自然感染の方が明らかにリスクが高くなっています。おたふくかぜのワクチンの有効率は90%前後と言われ、予防接種を受けた人のほとんどに免疫ができます。
お子さんを看病していた親に感染し、重症化するケースもあります。まだおたふくかぜにかかっていない親御さんは、集団生活をするお子さんからの感染の可能性も考えて、今からでも予防接種を受けておいた方が安心です。
任意接種のため6000〜8000円ほどお金がかかります(地域、病院によって費用に差があり)。ワクチンの取り寄せに時間がかかることもありますので、かかりつけの内科や耳鼻科に問い合わせ、前もって予約しましょう。
抗体があるかどうかは検査を受ければ分かりますが、検査には費用がかかります。既に抗体がある人がワクチン接種を実施しても問題はないため、検査を受けるかどうかは自己判断になります。