小川洋子さんの長編小説で、家族の物語です。
朋子は12歳の頃、1年間だけ岡山から神戸の叔母さんの家に預けられることになります。芦屋の大きな洋館で過ごすことになった朋子。そこには、自分と年の近いミーナという少女がいて……。
30年以上経った後に、朋子が回想する形で語られるこの物語は、朋子が芦屋の洋館で過ごす1年間の思い出話がメインです。
朋子は言いいます。「時間が流れ、距離が遠ざかるほどに、芦屋でミーナと過ごした日々の思い出は色濃くなり、密度を増し、胸の奥に根ざしていった」と。朋子にとってその一年間が、人生においてとても大切な時間だったことが分かります。その記憶が、後の朋子の生き方にも影響していきます。
読むと懐かしく、少し切なくなるような、小川洋子さんらしい素敵な小説です。
※『ミーナの行進』小川洋子、中公文庫、2009年