家に入ってくるモノの量 > 捨てるゴミの量
すごく簡単な方程式ですが、捨てる量よりも入ってくる量のほうが多ければ、モノが溜まっていきます。この方程式が有効な状態であるかぎり、溜まり続けていき、誰しもがいつかはゴミ屋敷となってしまいます。
対策はたったのふたつ。
- 入ってくる量を減らすか
- 捨てる量を増やすか
ゴミ屋敷対策となると、どうしても「ゴミをどうやって捨てるか?(捨てられるようになるか?)」を考えてしまいがちですが、「家に入ってくるモノを減らす」ほうが、ずっと良いと思うのです。
とはいえ、出来ない人が実際にそれをするのは、どちらも簡単なことではないでしょう。
ゴミ屋敷の住人はどんなひと?
私は以前、便利屋を経営していたので、ゴミ屋敷の片付けも汚部屋の清掃も、何度か経験させていただきました。大抵の依頼者は、礼儀正しくて、ごく普通の人達です。一部の人には精神疾患なども見受けられることはありましたが、それはごく一部というのが私の印象です。
あなたが持つ片付け力
人はみんな、性格も違えば能力も違います。ある人は重い荷物を持つことができるし、ある人は記憶力が良くてすぐに名前を覚えられます。一方で、力がなくて重いものを持てない人もいれば、会った人の名前を覚えられない人もいます。
同じように、モノを何百個も管理して上手に収納できる人もいれば、全然片付けられない人もいます。しかし、上述の能力の差異よりも、片付け力の差異は、少々不利です。片付けられないと、社会生活に支障をきたすことがあるためです。そのため、片付けられないことを他人から責められることもあります。片付け力の差異は、別に本人がなりたくてなったわけではないのに、これはちょっと可哀想です。
でも、大丈夫です。
重いものを持てなくても、人の名前を覚えるのが苦手でも、現代社会では、工夫次第で生活に不自由することはありません。重くて持てなければカートを使えばいいし、覚えられなければ携帯に入力すればいいのです。同様に、片付けられなくても、「片付けをする必要性を減らす」工夫をすればいいのです。
ゴミ屋敷への扉が開く瞬間
例えば、机の上に、鉛筆と消しゴムがあります。これくらいなら、だれでも片付けられるでしょう。しかし、いくつもの机の上に書類が満載になってしまったら、片付けられる人と片付けられない人が出てきます。
これは、片付け力の差ですが、つまり人それぞれに、片付けられる容量が違うということです。10キロまで荷物が持てる人は、11キロで荷物が持てない人に変わります。30人の名前が覚えられる人は、31人で名前が覚えられない人に変わります。これは、その人の能力のキャパシティです。
同様に、モノが少ないうちはちゃんと片付けられていた人が、片付けのキャパシティを超えてしまうと、片付けられない人に変わります。これは、誰しもに言えることです。
片付けられる人から、片付けられない人になる瞬間です。極端な例ですが、東京ドーム一個分の書類は、誰も片付けられないでしょう。
ひとたび片付けのキャパシティを超えてしまうと、もとに戻すのは大変です。普段以上の力を発揮して片付けるか、誰かに手伝ってもらわねばなりません。放っておくと、どんどん片付けられなくなり、モノが増え続けていきます。ゴミ屋敷への扉が開いてしまうのです。
片づけられない症候群?ADD/ADHD
ADD・ADHD(Attention-deficit / hyperactivity disorder:注意欠如・多動性障害)が「片付けれらない」ということに影響していると言われることがあります。ちなみに、ADDとADHDの違いは、多動性があるかどうかです。多動性のないADDは、障害が表に現れにくく、子供の頃はADHDで大人になると他動性が隠れてADDになることもあるようです。
ADD/ADHDかどうかの判断は、安易にすべきではないと思います。アメリカ精神医学会診断基準による正式名称のようですが、障害という言葉が、病的であったりハンディキャップがあったりというイメージを作ってしまうのも良くないと思います。また、ADD/ADHDは、薬を売るために製薬会社によって過度に定義された面があるとの指摘もあります。
整理整頓が苦手な人が、クリエイティブな仕事に人並み外れた力を発揮することもあります。ADD/ADHDと言われている人で、天才肌の有名人もたくさんいます。長所も短所もあるということでしょう。
セルフネグレクト 〜 高齢者と孤独死とゴミ屋敷
ゴミ屋敷の原因のひとつに、セルフネグレクトがあると言われています。もちろん、すべてのゴミ屋敷がそうではありません。セルフネグレクトでなくてもゴミ屋敷にしてしまうことは多々あります。しかし、セルフネグレクトの人は家をゴミ屋敷にしてしまうということは、言えそうです。
セルフネグレクトは、通常の生活を維持するために必要な行為を行う意欲・能力を喪失してしまうことです。つまり、片付けやゴミ処理を放棄してしまっています。これでは、「ゴミ屋敷になる方程式」にどうしても当てはまってしまいます。
セルフネグレクトの原因として、本人の意思による場合と、認知症や精神疾患などで判断力が低下する場合があります。自分のことを放棄してしまっている状態ですので、食事もとらず、医療も拒否し、不衛生な環境で生活を続け、家族や周囲から孤立し、孤独死に至る場合があります。ひとり暮らしの高齢者やひきこもりの中高年の方が、セルフ・ネグレクトを経て孤独死する例があるそうです。
「緩やかな自殺」ともいわれるセルフネグレクトを防止するためには、地域社会による見守りなどの取り組みなどが必要とされますので、「ゴミ屋敷の片付け」で解決できる問題ではありません。しかし、上図を見れば、ゴミ屋敷の無い社会は、セルフネグレクトの無い社会であるとも言えそうです。ゴミ屋敷の片付けを自治体が取り組むなかでセルフネグレクトの発見や防止・改善につながるかも知れませんし、セルフネグレクトの方へのケアはその住居のゴミ屋敷防止になるでしょう。
ゴミ屋敷の片付け方
ゴミ屋敷になってしまう原因や経緯は様々ですが、ゴミ屋敷に住みたくて住んでいる人はいないでしょう。
ごみ屋敷禁止法案
「廃棄物の集積又は貯蔵等に起因する周辺の生活環境の保全上の支障の除去等に関する法律案(ゴミ屋敷禁止法案)」が国会に提出されました。
自宅にため込まれた廃棄物の除去を自治体が働き掛ける法案です。廃棄物の集積や動物への餌やりなどに起因する悪臭を除去するため、自治体による立ち入り調査や撤去の勧告を可能とし、従わなかった場合は50万円以下の罰金を科すことが盛り込まれています。
「防止法案」ではなく「禁止法案」・・・。ゴミ屋敷になりたくてなっているわけではないのに禁止?
やろうと思っていることは禁止できます。でも、やろうと思っていないのに、自分ではどうすることもできずにそうなってしまうことを「禁止」っていうのは少し無理がある気がします。
ゴミ屋敷を禁止する法案ではなく、ゴミ屋敷を無くす社会にするべく取り組むような法案が良いと思います。
自治体独自の取り組み
東京都の足立区では、きれいな街の実現に向けて、ごみ屋敷対策の関連規定を整備しました。近隣住民に悪影響を及ぼし不良な状態にある、いわゆる「ごみ屋敷」の問題を解決するための支援策等を盛り込んだ『足立区生活環境の保全に関する条例』が、足立区議会において全会一致で可決されたのです。
この取り組みは、ゴミ屋敷を頭ごなしに禁止するのではなく、解決するための支援策を打ち出した取り組みです。なんと、ごみ屋敷のごみ処分に、行政が100万円までの処理費用を出す条例なのです。
ゴミ屋敷を無理やり撤去するのではなく、行政職員が何度もゴミ屋敷を訪問して、信頼関係を構築し、ごみを溜めてしまった本人とともに少しずつ片付けて行く方法で成果をあげているそうです。これは、本来あるべきモデルケースの一例ではないでしょうか?
ゴミ屋敷の片付け業者
私が昔経営していた便利屋は、ゴミ屋敷の片付け業者としても有名です。その他、汚部屋の掃除や、遺品整理など、片付け業務をメインにしている便利屋は多いと思います。
自分一人で片付けられるキャパシティを遥かにこえてしまい、手伝ってもらえる人もおらず、お住まいの行政の力も借りることが出来ない場合は、便利屋のような片付け業者に依頼する方法もあります。問題は、「どの便利屋に依頼すればいいのか?」という部分でしょう。
実は、ゴミを引き取って処分するには、一般廃棄物運搬処理業の認可が必要です。従って、無認可の便利屋は違法ということになります。また、一般廃棄物運搬処理業の認可は自治体ごとになりますので、お住まいの自治体の認可を受けた業者でないとダメです。
ただし、個人が家庭から出たゴミを自分で処分場に持ち込んで廃棄することが認められている場合は、『自分でゴミを持ち込めば』大丈夫ということになります。これを利用して、ゴミの片づけから分別・袋詰めまでしてもらって、最後のゴミ廃棄の部分だけを自分の責任で行うということも、出来なくはないでしょう。不便ですし、一般的では無いと思いますが。。。
資格を持った片付けのプロ 〜 整理収納アドバイザー・ライフオーガナイザー
また最近では、片付けアドバイザーの資格がさかんに取得されています。整理収納アドバイザーや、ライフオーガナイザーといった資格を取得し、片付けのサービスを提供している専門家です。
理論をしっかりと学んでいるので、片付けられない人への対処法やノウハウもしっかりとしています。単にゴミを無くすのが目的ではなく、ゴミ屋敷になってしまう原因を排除し、どうしたらゴミ屋敷になりにくいのか、自分に合った片付け方はどんな方法なのか?散らかりにくくて使いやすい部屋の収納設計はどうすればいいのか?など、ゴミ屋敷にならないための対策に、片付けや整理収納のプロである専門家の助けを借りることができます。
ゴミ屋敷の片付けに高いお金を払うよりも、ゴミ屋敷にならないための対策にお金を使ったほうが、幸せ度は高いと思います。
片付けなくても良い暮らし
片付けられない人や片付けが苦手な人は、「どうしたら片付けられるようになうのだろう?」と悩むよりも、「どうしたら片付けなくても快適に暮らせるだろう?」という部分に、知恵を使ったほうが賢いと思います。
昔はゴミ屋敷なんて無かった?
最近では、片づけ本がベストセラーになることもしばしばですが、高度経済成長前はそうでもなかったようです。まして戦前戦後や、それよりもっと昔は、「片付けられない」がこれほどまで問題になることも少なかったのではないかと思います。
現代人は、片付けが下手になってしまったのでしょうか?近年になって、片付けられない人が出現してしまったのでしょうか?
多分、どちらも違うと思います。これは単に、モノが増えたからだと思います。豊かな時代になったことで、身の回りにモノが溢れかえってしまったのです。そのため、自分のキャパシティを超えたモノたちが部屋に入ってくることで、片付けられない状態になることが多くなってしまったのだと思います。
モノがない時代に、大金持ちでもない限り、モノで家を溢れんばかりに一杯にしたゴミ屋敷になんで出来ませんよね。
逆に現代では、ゴミ屋敷を片付けるのにお金がいる時代です。
片付けとゴミを減らす
片付けられない人は、「しっかり片付けよう」と、苦手な片付けを増やそうとしてしまいがちですが、これはアプローチを間違っています。出来ないことを無理にしようとしても、苦しくて辛いだけです。
どうしたら片付けなくても快適に暮らせるだろう?
と、考えてみてください。必要なのは、片付けを減らすアイデアです。
もし部屋に紙がたくさん散らばっているのなら、紙類を撲滅させるために、それらを全部スキャンしてしまって、iPadやタブレット・スマホで情報管理をしてみたらどうでしょうか?
キッチンに料理器具が溢れていたら、○○用△△用と使い分けていた鍋をやめて、ひとつの万能鍋だけにするとか、もっと割りきって料理は圧力鍋でできるものに限ってしまうとか、お皿も色々な種類を揃えるのはやめて万能的に使えるお皿ひとつで済ませてしまうとか。
道具はできる限り一つで済ませて、なんでもそれでできるようにしてしまうのが、片付けを減らすコツです。そのためには、道具選びを慎重にしましょう。多少は高価でも、有能でお気に入りの道具を一つだけ買いましょう。そしてそれをとことん愛して、使い続けましょう。
とびっきりのお気に入りのひとつのモノを、大切にして大事に使うことが、余計なモノが増えることを無くし、ゴミを減らし、片付け作業も減らしてくれます。
収納を減らしてゴミ箱を増やす
片付けられない人は、モノが溢れている状態を見て、「もっと収納があればいいのになぁ!」と考えてしまいます。これは、根本的に間違っています。ただでさえモノが多すぎて、すでに自分の片付け力のキャパシティを超えてしまっているのに、さらに収納を増やしてしまっては、新たなゴミを増やしてしまうだけです。
逆なのです。自分のキャパを超えているのなら、キャパの範囲内に収まるように、収納を減らさないといけないのです。そこに収まらないものは、自分で管理できる範囲を超えているモノなので、処分しましょう。モノが捨てられない方もいらっしゃいますが、処分するのと、捨てずに埋もれてゴミになるのとどっちを選ぶかの問題になりますので、きっと前者の方が幸せになります。
もし、どうしても捨てられない人で、物置にスペースが余っているのなら、捨てられないモノを物置に埋蔵するのはひとつの方法です。あなたが片付けられなくなった時に(あるいは縁起でもない話ですが死後に…)、誰かが片付けてくれます。タイムカプセルのようなものですが、どこかにあると思うと、安心する一面はあると思います。
収納を減らすと同時に、増やしたほうが良いモノもあります。ゴミ箱です。
ゴミを入れやすいように、蓋のないゴミ箱を選びましょう。それを、ゴミが発生する場所に置くようにしましょう。ゴミが出た時に、ポイッとどこかに捨ててしまわないように、近くにゴミ箱を設置しましょう。そして、ゴミ箱以外に、ゴミを放さないようにルールを徹底しましょう。
片付けられるようになる瞬間
このようにして、家に入ってくるモノの量を減らし、捨てるゴミの量の増やしていくと、ゴミ屋敷の方程式を解くことができます。
モノの量が、あなたの片付け力のキャパシティの範囲内に収まったとき、あなたは片付けられる人に変身します。片付けられるようになる瞬間です。
豊かさを増やす
モノを減らしただけでちょっと寂しいという人は、心の豊かさを増やしてみましょう。モノよりも、案外ステキなことかもしれませんよ。
情報を増やす
ITリテラシーとか情報格差という言葉を耳にすることがありますが、情報を知っている人と知らない人では、幸せ感に大きな影響があると思います。
例えば、『美味しい物を食べる』ということを考えてみましょう。もしあなたが、安くて美味しいお店を知ってたら、それを食べることができます。あるいは、美味しいレシピを知っていたら、それを食べることができます。知らなければ、その幸せを享受することはできません。ここで一番必要なのは、情報なのです。
情報をたくさん持っていて、知識があれば、より良い方法を選択できるようになります。逆に、知らないことで、苦労をしたり不遇・不幸な目にあってしまいます。
情報を増やすのにオススメなのは、iPadやタブレットです。このツールは、インターネットにアクセスして情報を増やしてくれるだけでなく、生活していく上で多くの事をしてくれるスグレモノです。ドキュメントも、写真や動画も、スケジュール管理も、コミュニケーションも。本も読めるし、音楽も聞けるし、映画見れるし、環境さえ整えればテレビだって見れます。これひとつで、多くのモノが不要になるので、片付けの苦手な人にはぴったりの万能道具です。
趣味を増やす
片付けの時間から開放されたら、趣味の時間を作ってみてはいかがでしょうか?
こちらの記事も参考にしてみてください。
付き合いを増やす
気の合う仲間と過ごす時間は、生きている幸せを実感できます。
とはいえ、嫌な付き合いもあるでしょう。そんな方は、下記の記事も参考にしてみてください。
番外編
2014年7月3日(木)に放送の「あのニュースで得する人損する人」(19時00分~19時56分)のテーマが「ゴミ屋敷」なのだそうです。
最近、国会で「ごみ屋敷禁止法案」が提出されるなど、大きな社会問題になっている「ゴミ屋敷」。自分は大丈夫と思っていても、些細なキッカケでゴミ屋敷になってしまう可能性があった…
- 大阪発!夫も子どももいる、片付けられない女社長のゴミ屋敷生活に密着!
- さらに、部屋が片付けられないことで有名な女性タレントの自宅を大公開!
- 番組は、ゴミ屋敷になるまでの過程を徹底取材!彼女たちの生活を長期に渡り観察し、なぜゴミ屋敷になってしまうのかを紐解きます!
「ゴミ屋敷はなぜ生まれるのか?」解明スペシャル
▽芸能界を代表するゴミ屋敷&家族3人ゴミの中で暮らす美人社長の自宅に潜入&驚きの生活ぶりに密着
▽潔癖・芸能人がゴミ部屋訪問で絶叫
▽のべ504時間!一旦片付けた部屋がゴミ屋敷に戻ってしまうまでの一部始終の撮影に成功!実はゴミ屋敷が生まれるきっかけは誰もがやってしまう可能性がある些細な行動だった!専門家が部屋を汚れにくくするコツを伝授!
普段テレビを見ない私ですが、部屋を汚れにくくするコツを伝授してくれる専門家が誰なのか気になる〜(笑)